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【社会】

朝鮮人虐殺、都内で劇や企画展 都知事の追悼文中止に危機感

企画展示「描かれた朝鮮人虐殺と社会的弱者」を見る人たち=東京都新宿区で

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 一九二三年の関東大震災の直後に朝鮮人らが多く虐殺された問題をテーマにした劇の上演や企画展示が今夏、相次いでいる。背景にあるのは、小池百合子東京都知事が昨秋、犠牲者追悼式への追悼文送付を取りやめたことへの危機感。史実に向き合い、伝えていこうとの思いを込めている。 (辻渕智之)

 「一般の(震災での)犠牲者と、人の手で殺された被害者は違う。(小池知事が追悼文を送らなければ)民族差別の事実が否定されることになる」

 「ひょっとしてあんた朝鮮人? 中国人?」

 こんなセリフも行き交う。劇「九月、東京の路上で」は二十一日〜八月五日に東京都世田谷区の劇場「下北沢ザ・スズナリ」で上演される。今もある差別や排外主義とも重ね合わせ、デマや虐殺が広がる九十五年前の現場を追体験できる。

 劇団「燐光群(りんこうぐん)」の公演で、主宰する劇作家の坂手洋二(さかてようじ)さん(56)は話す。「生き証人がいなくなったときに歴史の捏造(ねつぞう)に抵抗し、承継していくためのスタートラインにしたい」

 昨年、小池知事は記者会見で歴史認識を問われたが「虐殺」「殺された」という言葉を避けた。虐殺の史実は戦前の公文書にも記されているが、こうした事実を認めようとしなかった。

 劇は作家加藤直樹さん(51)の同名の本が原作。戒厳令下でデマの拡散や殺害に警察や軍が加担したことも明らかにされる。劇中では、自衛官が野党議員を「国民の敵」とののしり、虐殺はなかったと主張する。坂手さんは問う。「日本人は、弱い人間が死んでいくことへの感受性がとても弱いのではないか。そして、軍隊が軍隊の秩序で動くという怖さも忘れている」

 一方、新宿区大久保の認定NPO法人高麗博物館では企画展示「描かれた朝鮮人虐殺と社会的弱者」が開かれている。

 虐殺を実際に見た画家や当時の小学生らが描いた絵などのパネル約三十点と関連書籍が並ぶ。流血して横たわり、恐怖におののく朝鮮人、周りに警察、軍隊、自警団、群衆が描かれ、殺気と悲しみが伝わる。

 日本人と見分けるため、朝鮮人が発音しにくい語句を言わせ、答えられなかった日本人の聴覚障害者ら社会的弱者が殺されたことも紹介している。「虐殺にリアルに迫るような展示が公的な施設では困難になっている。でも、その現場を描き、書いた人はいた」と新井勝紘(かつひろ)館長(73)は話す。

 東日本大震災でも外国人窃盗団のデマが流れ、各地でヘイトスピーチのデモが横行した。「負の歴史にフタをせず、ちゃんと直視し、乗り越えられるかが問われている」

 展示は十二月二日まで。劇、展示の問い合わせはそれぞれ燐光群=電03(3426)6294、高麗博物館(月火休み)=電03(5272)3510=へ。

 

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