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【社会】

西日本並み雨量なら54万人孤立 東京の豪雨対策進まず

荒川流域に想定最大の3日間632ミリが降った場合の浸水想定区域図。国土交通省が2016年に作成した。赤色が濃いほど深い。シミュレーションはこれも参考にした

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 二百二十四人が死亡した西日本豪雨の被害は、首都・東京にとっても人ごとではない。都内で豪雨が増える傾向にあり、都は対策に取り組んでいるが、十分とは言えない。各家庭でも豪雨時の注意点を知り、備えが必要だ。 (榊原智康、森川清志)

 「西日本豪雨のような雨が降れば、荒川が氾濫する可能性は十分にある」。水害の恐ろしさを紹介した「首都水没」の著者で、元江戸川区土木部長の土屋信行さんはこう指摘する。

 西日本豪雨では少なくとも二十地点で、三日間の降雨量が五〇〇ミリを超えた。国土交通省は二〇一六年、荒川上流の埼玉県を中心に降雨量が三日間で五〇〇ミリを超えれば、下流の都内で堤防が決壊、大規模な浸水被害が起きるとのシミュレーションをまとめている。

 荒川の下流域は「海抜ゼロメートル地帯」だ。シミュレーションでは午前四時に北区で堤防が決壊した場合、浸水域は都内東部だけでなく、中央区や千代田区のオフィス街にまで広がる。都心の地下鉄駅は多くが水没。死者は地下鉄構内を除いて二千三百人、孤立は五十四万人と見積もった。

 流域の人口が多く、浸水面積が広いため被害も大きい。土屋さんは「多摩川や江戸川、都心部の中小河川も氾濫する恐れはある」と警告する。

豪雨による水害が想定される荒川(中央)の下流域。左は合流する中川=東京都葛飾区上空で、本社ヘリ「あさづる」から

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 都によると、豪雨は都内で増加傾向にある。滝のように降り、傘が役に立たない非常に激しい雨(一時間五〇ミリ以上)は、一九八〇年代は観測されない年もあった。二〇〇〇年以降は都内の20%以上の観測所で計測される年も多い。コンクリートなどで埋められた街が温められるヒートアイランド現象や、地球温暖化の影響が考えられるという。

 一〇年には板橋区などで八百棟、一三年には世田谷区などで五百棟の床上、床下浸水が発生。豪雨時は河川の氾濫だけでなく、雨水が下水道管から河川に流入する前に、マンホールなどからあふれる「内水氾濫」も起きる。都内では近年、内水氾濫の浸水被害が全体の八割を占めている。

 都は、下水道管の増強やポンプの設置などの対策に取り組んでいる。二十三区内で対策が必要とされる五十四地区のうち、工事完了は三割の十六地区。地下鉄や電線など地下利用が進み、工事が難しいという。全地区で工事を終える時期の見通しは立っていない。

 

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