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【社会】

前局長「ねだりの構図」 東京医大裏口入学の土壌 受験者に「◎」「○」

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 文部科学省の私立大学支援事業を巡る事件で、東京地検特捜部は二十四日、東京医科大に便宜を図る見返りに自身の子どもを不正入学させたとして、受託収賄罪で同省の前科学技術・学術政策局長佐野太容疑者(59)を起訴した。同ほう助罪で元医療コンサルティング会社役員谷口浩司容疑者(47)を起訴したほか、贈賄罪で医科大の臼井正彦前理事長(77)と鈴木衛(まもる)前学長(69)を在宅で起訴。調べでは、佐野被告から進学話を持ち掛けた「ねだりの構図」が浮かび、医科大で近年、不正入学が横行していた疑惑も表面化した。 (蜘手美鶴、山田雄之)

■賄賂と請託

 関係者によると、昨年五月十日、都内の飲食店で佐野、臼井両被告らが会った。佐野被告は当時、医学部を目指して浪人中だった子どもの今後を気にしていた。会合をセットしたのは、佐野被告の意を受けた谷口被告だった。

 佐野被告は、子どもが所属した高校野球チームの活躍を伝える記事を、自慢げに臼井被告に見せたこともあった。「東京か近郊の医大に行きたがっている」と進学希望をにおわせた。

 一方の医科大は当時、文科省の私立大学研究ブランディング事業の申請準備中。応募締め切りまで約一カ月しかなく、臼井被告は前年度の申請書類を持参していた。佐野被告は「もっと字を大きく」「図表を入れた方がいい」と助言し、「子どもが受験するのでよろしく」と依頼したという。

■「渡りに船」

 「受験者名が載った手書きメモを見た」。医科大の元幹部は本紙の取材に、自身が数年前まで関わった「裏口入学」の実態を明かす。メモには、受験番号や記号も書いてあった。「◎は『絶対入学させたい』、○は『できれば入れたい』、無印は『無理はしない』の意味だ」と説明する。

 二次試験の論文の点数を議論した入試委員会前。当時、学長だった臼井被告がメモを示し、受験者名について「これは国会議員の紹介」「こっちは厚労省」と説明したという。「少し加点しよう」と言えば、委員らは「そうですね」と相づち。この元幹部は「毎年十数人、多い年は二十五人。◎は毎年十人ぐらいだった」と振り返る。

 検察幹部は「裏口入学の下地がある中で、佐野前局長の求めは『渡りに船』だったのだろう」とみる。

■司法取引に類似

 「今回の捜査は司法取引みたいなもの」。ある検察幹部が評した。他人の犯罪情報を提供する見返りに、刑事処分の軽減が得られる制度。今回は司法取引の正式な手続きは踏んでいないが、特捜部は贈賄側を事前に任意聴取して捜査に有利な供述を得て、逮捕を見送っており、手法が似ているとの指摘だ。

 今年六月の制度導入前のリニア中央新幹線工事を巡る談合事件でも、容疑を否認したゼネコン側と認めたゼネコン側で刑事処分に差がついた。検察による「アメとムチ」が顕著になっているようにもみえる。

 元検事の高井康行弁護士は「容疑を認めれば逮捕されないという風潮が広まれば、虚偽自白が増える可能性が拭えない。今後は、捜査に協力した側の供述を裁判でより慎重に審理しないといけない」と話した。

◆「職務権限ない」起訴内容否認

 起訴内容などでは、佐野被告は文部科学省官房長だった昨年五月、臼井被告から同省の私立大学支援事業に医科大が選ばれるよう便宜を図ることを依頼され、見返りに子どもを不正入学させてもらったとされる。臼井、鈴木両被告は今年二月、医科大を受験した佐野被告の子どもの入試点数を加点して合格させたとされる。谷口被告は、佐野被告の意図を知りながら臼井被告と引き合わせ、佐野被告の指示を受けて支援事業の事業計画書の書き方を指導したなどとされる。

 関係者によると、佐野被告は「官房長には事業対象の大学を選ぶ権限はない」などと否認しているといい、法廷では職務権限を巡る争いになりそうだ。

 

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