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【社会】

「被害続いている」 オウム全死刑囚 刑執行

記者会見する地下鉄サリン事件被害者の会代表の高橋シズヱさん=26日午前、東京・霞が関の司法記者クラブで

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 オウム真理教元代表の麻原彰晃(しょうこう)元死刑囚=執行時(63)、本名・松本智津夫(ちづお)=ら教団幹部七人の死刑執行からわずか二十日。残る死刑囚六人の死刑が二十六日に執行された。十三人全員の執行が終わったことに、被害者や遺族からは「適切な判断だ」という声が上がる一方、「執行すべきでなかった」という批判も。サリンの後遺症を抱える被害者を思い、「被害は続いている」と声を詰まらせる人もいた。 (池田悌一、岡本太、望月衣塑子、柏崎智子)

 「十三人全員の刑が執行されたが、後遺症を抱えた人もいる。被害は続いている状況で、すごくつらい」

 一九九五年の地下鉄サリン事件で夫を亡くした高橋シズヱさん(71)は、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見し、時折声を詰まらせながら語った。

 「けさは豊田(亨)死刑囚のことを考えていたので、執行が始まったと聞いて、動揺というか緊張した」と話した高橋さん。豊田死刑囚本人と手紙のやりとりなどもしていたことに触れ、「他の死刑囚よりは思うところがあった。一番話したかった」と複雑な思いも漏らした。

 一方、死刑執行については「オウム事件ではやむを得ないと思っている」とも話した。

 公証役場事務長監禁致死事件で当時六十八歳の父親を亡くした仮谷実さん(58)は「今回執行された六人は父が巻き込まれた事件とは直接関係がないが、事件の被害者や遺族の方々の気持ちを思うと、裁判所の判断に基づき、政府は適切な死刑執行の判断をしていただいたと思う」と述べた。

 「オウム事件の加害者たちは謝罪の言葉を述べたり、手紙を出したりはしたが、直接的な償いをしていない人がほとんどだ。自分たち遺族にとっては、小さな区切りでしかない。父を殺された心の痛みは、自分が死ぬまで引きずり続ける。死刑が執行されても、この事件が終わりになることはない」と胸の内を明かす。

 一方、「信者はさんざん薬を使われ、自分の頭で考えられない状態にされていた。執行すべきではなかった」と語るのは、教団から猛毒ガスVXで攻撃された永岡弘行さん(80)。初期に教団の暴走を止められず、大勢の信者の死刑が執行されたことに心を痛め、「『だから言ったじゃないですか!』の一言に尽きる」と怒りで声を震わせた。

 永岡さんは長男が八七年に入信し、二年後に出家。脱会させるため奔走し、八九年に同じ境遇の親たちと「オウム真理教被害者の会」(後に「家族の会」に改称)を結成した。「この教団は危ない、放っておいてはいけない、とさんざん警察にも行政にも言ったのに、聞く耳を持ってくれなかった」。長男を脱会させることはできたが、教団には大勢の信者が残って暴走。「こんなに多くの死刑を執行したことは、国民として恥ずかしい。家族の会としても力が及ばず、腹立たしい」と憤った。

 

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