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【社会】

<「やまゆり園」事件から2年>「なぜ」今も問い続け

植松被告と接見した印象などを話す神戸金史さん=東京都中央区で

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 「津久井やまゆり園」で入所者十九人が殺害された事件は、障害がある子を持つ親に大きな衝撃を与えた。植松聖(さとし)被告(28)=殺人罪などで起訴=は意思疎通ができない障害者を「心失者(しんしつしゃ)」と呼び、生きる価値がないと決めつけた。その考えがどこから来るのか知ろうと、接見や手紙のやりとりをしている親がいる。 (井上靖史)

 「うちの子がもし、その場にいたらと思ったらぞっとした」。RKB毎日放送(福岡市)東京報道部長の神戸金史(かんべかねぶみ)さん(51)は昨年十二月以降に四回、植松被告と接見した。意思疎通が困難な入所者を殺したと主張する被告に、就寝中だったのにどうやって対象を決めたのか聞くと「『おはようございます』と起こして、答えなかった人を刺した」と返され、「そんな理由で…」とがくぜんとした。

 自閉症の長男金佑(かねすけ)さん(19)は話をするのが困難だ。障害者の存在を否定する被告の供述が報じられるたび、「心の中がやすりで削られる気分」になった。事件二日後、金佑さんが生まれてきたことで妻や次男を含めてさまざまな経験ができ、多くの事に気付かされたという趣旨の文章をフェイスブックに載せると、大きな反響を呼んだ。

 金佑さんは一昨年から、無料通信アプリのLINE(ライン)で「誕生日おめでとう」と送ってくるようになった。それを接見の際に植松被告に伝えると、驚いた表情を見せた。神戸さんは「本も読まず、いろいろなことに対する知識が極めて浅い。それなのに重大な決断をしてしまった」と感じたという。

植松被告に送る手紙の文面を考える最首悟さん=横浜市の自宅で

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 和光大名誉教授の最首(さいしゅ)悟さん(81)も今月、植松被告に接見した。最首さんの三女星子(せいこ)さん(41)はダウン症で目にも障害がある。事件への思いを新聞に投稿していた最首さんにフリーライターを通じて被告から住所の照会があり、伝えると間もなく手紙が届いた。国の借金と障害者施策の関係をどう考えるか尋ねてきた。

 返事を出す前に接見することになり、拘置所では手紙の質問の趣旨を確認し、優生思想や安楽死についての考え方を聞いてみた。植松被告は一方的に話すばかりで議論にならなかった。「考える世界がすごく狭い。自分の発想を承認してもらいたいだけなんだろう」

 最首さんは最近、返信を出し、「世の中には分からないことがある。それが腑(ふ)に落ちると、人は穏やかな優しさに包まれるのではないか」と記した。時間をかけて手紙のやりとりを重ね、植松被告に自分の考えを伝えていくつもりだ。 

 

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