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【社会】

子育て町ぐるみ、出生率アップ 福島・矢祭 町職員減など節約徹底

子育てつどいの広場「カンガルーくらぶ」では、親同士、子ども同士で友達に=福島県矢祭町で

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 国内の出生率が1.4人台と低迷する中、毎年国を上回り、年によっては2人を超す町がある。平成の大合併の際、「合併しない宣言」(2001年)をして全国の注目を集めた福島県矢祭(やまつり)町だ。「子どもは町の宝、国の宝」を合言葉に、子育て支援のために身を切る改革を実行。人口5900人の小さな町で、若い世代の産みづらさ、育てづらさを解消する多くの政策が実を結んでいる。 (山本哲正、写真も)

 福島・郡山駅からJR水郡線で約一時間半。矢祭町保健福祉センターにある子育てつどいの広場「カンガルーくらぶ」では、四人の母親が談笑したり、子どもたちが木のおもちゃや絵本で楽しそうにしていた。

 菜々花ちゃん(1つ)を抱いた鈴木恵里子さん(36)は結婚を機に同県いわき市から転入した。子どもは三人。広場には小五の長男が生後六カ月のころから通う。

 「お母さん友達ができ、助言をもらった。今は私が不安を和らげる立場。三人目を産むのに迷いがなかったのは矢祭だから」

 町は〇五年に制定した自治基本条例に「『元気な子どもの声が聞こえる町づくり』に努める」と明記。町長らの給与引き下げや町職員の削減など、徹底した行財政改革(別表)で財源を捻出。次々と独自の子育て支援策を打ち出してきた。

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 〇五年に当時は全国でも珍しかった誕生祝い金制度を導入。第三子に百万円、第四子に百五十万円、第五子以降は二百万円を十年間かけて支給する。第一、二子にも十万円を与える。役場には結婚支援室があり、町民から選ばれたアドバイザーが出会いや婚活をサポート。結婚祝い金(二十万円)制度もある。教育支援にも力を入れ、幼稚園と保育園を一元化した「やまつりこども園」の保育料は周辺町村の三分の一、小中学校の給食費も半額程度にした。

 〇七年まで町長を務め、改革を実行した根本良一さん(80)は「(祝い金制度などの)お金だけでは魂が入らない。共働きの夫婦が子育てしやすいようにすることも重要だった」と言う。

 そこで出勤前や仕事後も役場で用事が済ませられるように、職員の早出・遅出をいち早く導入。窓口業務を午前七時半から午後六時四十五分まで広げた。こども園も同じ時間帯で子どもを預かるようにした。「仕事を終え、買い物をした後でも、子どものお迎えができる」と根本さん。

 全国の出生数が下がり続ける中、町は減少傾向が止まり、一九九九年以降は四十〜五十人前後で推移する。二年連続で出産する女性が少ないこともあり、隔年で増減しているが、合計特殊出生率(女性が一生で産む子どもの数)は毎年全国値を上回り、一三年は二・一九人、一五年は二・一二人を記録した。

 八歳から一歳の男児三人を育てる石原千春さん(39)は七月から、近くの食品工場で働き始めた。「核家族なので、こども園に預けられる時間が長いのはありがたい。夫と一緒に稼ぎ、一緒に家事や子育てをする。理想だった暮らしができそうです」と笑顔を見せた。

<矢祭町の合併しない宣言> 平成の大合併が進行していた2001年、当時の根本良一町長は「合併は国の押しつけ。町民のためにならない」と自立の道を選び、町議会は「市町村合併をしない矢祭町宣言」を決議した。基本条例で「人口減少に歯止めをかけ、適正規模の共同社会を目指す」として改革を進めた。

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