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【社会】

消えた勝利「人生変えた」 山根会長意向「奈良判定」疑惑

2016年の岩手国体の試合。レフェリーに勝者として手を挙げられた奈良県の選手(手前)が驚きの表情を浮かべ、岩手県の選手(奥)はぼう然としている=岩手県選手の父親提供、一部画像処理

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 アマチュア選手を統括する日本ボクシング連盟が助成金の流用や不正判定などを疑われている問題で、二年前の国民体育大会で奈良県代表選手からダウンを奪いながら判定負けとされた選手の父親(56)が、本紙の取材に応じた。かつて奈良県連盟会長だった日本連盟の山根明会長の意向に沿った判定が行われてきた疑惑があり、父親は「『奈良判定』という言葉は知っていたが、あまりにひどい」と憤る。 (森合正範)

 二〇一六年十月に行われた岩手国体での成年男子バンタム級1回戦。岩手県の選手が奈良県の選手と戦い、最終3ラウンドに二度のダウンを奪った。二度目のダウンは全身がリングに崩れ落ち、通常ならその時点で、プロのTKOに相当するレフェリーストップコンテスト(RSC)と判定されることが多いケース。岩手県の選手は勝利を確信して跳び上がってガッツポーズもした。

 だが、三人の審判員の判定では、僅差で岩手県の選手が1−2で敗れた。満員の会場から判定に対する不満で怒号が飛び、「また、奈良判定が出た」という言葉が聞かれた。会場で試合を動画で撮影していた岩手県選手の父親は「息子の作戦通りで、ストレートを当てて一方的な展開。勝ちを確信していた」と話す。

 都道府県連盟の幹部らでつくる「日本ボクシングを再興する会」が七月に日本オリンピック委員会(JOC)などに送った告発状や資料によると、山根会長はひいきにしている選手や奈良県の選手の試合前、自身の指示に従う審判員を配置したり、意に反する判定をした審判員を怒鳴ったりしていたという。このため、アマボクシング界では「奈良判定」という言葉が広がっていた。

 撮影された動画では、奈良県の選手が判定後に「ごめん」と謝っているように見えるシーンがある。父親は「闘った者はどちらが勝ったか分かる。申し訳ない気持ちがあったのでしょう。試合後、息子は『オレ、謝られた』と話していた」と振り返った。選手として全日本選手権の出場経験がある父はこの判定を機に、岩手県連盟の常任理事などボクシングにかかわる全ての役職を辞任した。敗れた選手も一年半、競技を離れたといい、「選手は一生懸命努力をして試合に臨んでいる。一つの判定で人生が変わる。公正なリングになってほしい」と願いを口にした。

 日本連盟はこの試合について、奈良県の選手のダウンは「レフェリーストップさせるほどのコレクトパンチではなかった」とし、「プロとは異なり、ダウンはクリーンヒットの一つ。クリーンヒットの数でポイントが決まる」と判定は正当だったと強調している。

 

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