東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 8月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

栃木女児殺害、二審も無期 東京高裁 状況証拠で判断

勝又拓哉被告

写真

 二〇〇五年に栃木県今市市(現日光市)で小学一年の女児を殺害したとして、殺人などの罪に問われた勝又拓哉被告(36)の控訴審判決で、東京高裁(藤井敏明裁判長)は三日、無期懲役とした一審の裁判員裁判判決を破棄し、あらためて無期懲役を言い渡した。有力な物証がない中、被告は公判で一貫して否認しており、捜査段階の自白の信用性が争点となっていたが、藤井裁判長は「状況証拠を総合すれば被告が犯人と認められる」と認定した。 (山田祐一郎、蜘手美鶴)

 勝又被告は捜査段階で「茨城県内の林道でナイフで多数回刺して殺した」と自白。一審宇都宮地裁は、被告の車の走行記録など客観的事実のみでは「犯人と認定できない」としたが、捜査段階の取り調べを録音・録画した内容を重視。殺害を認めた自白調書は信用できると結論づけていた。

 藤井裁判長はこの日の判決理由で、一審判決が捜査段階の取り調べの録音・録画記録を基に有罪認定したことを「違法」と断じ、「自白に基づき殺害の日時と場所を認定した一審判決は破棄を免れない」と批判。その上で、控訴審段階で日時と場所に幅を持たせた起訴内容に変更された点を考慮すれば、「被告が犯人と認められる」と判断した。また、勝又被告が捜査段階で母親に宛てた手紙の内容を重視。「今回、自分で引き起こした事件、お母さんにめいわくをかけてしまい、本当にごめんなさい。まちがった選択をしてしまった」と記されていたことを踏まえ、「『事件』が本件殺人を指すと読むのが合理的。被告が犯人でないとすれば、合理的に説明することは極めて困難だ」と指摘した。

 藤井裁判長は控訴審の審理過程で、犯行の日時や場所について検察側に再考を促した。検察側は、日時も場所も大きく幅を持たせる起訴内容に変更し、認められた。

◆「録音・録画で犯罪認定 違法」

<解説> 栃木小一女児殺害事件で東京高裁が、一審の裁判員裁判判決をあえて破棄してまであらためて無期懲役を言い渡したのは、本来は違法捜査のチェック機能として導入した取り調べの録音・録画記録が、検察側の武器として使われることへの強い警鐘だ。

 藤井敏明裁判長は判決理由で、録音・録画で犯罪事実を認定した一審判決を「違法」とまで踏み込み、映像の目的外使用を批判した。

 一審で裁判員を務めた男性が「録音・録画がなかったら判断ができなかった」と振り返ったように、川崎市の老人ホーム転落死事件など裁判員裁判ではとりわけ、映像や音声が判決に及ぼす影響は大きい。

 だが、録音・録画の導入は、密室の取り調べで自白の強要や誘導がなかったかどうかをチェックし、冤罪(えんざい)を防ぐのが目的だったはずだ。

 裁判官も証拠採用するにはためらいがあるのか、二〇一六年五月〜今年五月までに全国の地裁であった刑事裁判では、検察側が録音・録画を証拠申請して認められたのは55・7%で、判断が割れている。

 今回の判決は、自白ではなく客観証拠を重視する姿勢を見せたが、犯行の日時と場所を、当初の起訴内容から大きく広げた上での判断となった。

 いつどこで幼い命が奪われたのか。肝心な部分が未解明なままの判決で、消化不良感は否めない。(山田祐一郎)

<栃木の小1女児殺害事件> 2005年12月1日午後2時40分ごろ、小学1年の吉田有希ちゃん=当時(7つ)=が下校途中に行方不明となり、翌2日に約60キロ離れた茨城県常陸大宮市の山林で遺体が見つかった。勝又拓哉被告は14年6月に逮捕され、捜査段階では殺害を認めたものの公判で否認。一審宇都宮地裁の裁判員裁判は、取り調べの録音・録画の内容などから自白調書の信用性を認め、無期懲役の判決を言い渡した。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】