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【社会】

「恐怖に屈し不正判定」 ボクシング現役審判証言

証言した審判員の審判手帳とワッペン(一部画像処理、「日本アマチュアボクシング連盟」は現在の日本ボクシング連盟)

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 日本ボクシング連盟の不正判定疑惑をめぐり、山根明会長の意向に沿った不正判定にかかわったという現役の審判員が本紙の取材に応じ、実態を語った。不正判定は二〇一二年ロンドン五輪後に始まったといい、長期間にわたり「接戦で会長が好む選手にポイントを入れていた」と証言。「会長の怖さに屈してしまった。選手に申し訳ない」と心境を吐露した。 (森合正範、奥村圭吾)

 この審判員の男性は、国内で最上級のA級RJ(レフェリー、ジャッジ)の資格を持つ審判歴二十年以上のベテランで、「ロンドン五輪後から少しずつ判定の雰囲気が変わっていった」と振り返る。同五輪では村田諒太選手の金メダルなど史上初の複数となるメダル二個を獲得。連盟内で発言力を増した山根会長が、新たに「終身会長」のポストに就任した時期と重なる。

 一三年の全国大会で、男性は大阪府の選手の試合を担当。この選手の負けと判定し、山根会長から「おまえだけ割ったな」と怒られ、翌日から出番が減ったという。判定が分かれることを「割れる」といい、この男性を除く四人の審判員はいずれも大阪府選手の勝ちにしていた。

 この頃から山根会長は、大会前や決勝戦前の審判員ミーティングで特定の選手の名前を挙げ、勝たせないといけないような雰囲気をつくるようになったという。「この選手を育てるために投資をしてきた。負けがあったら、この金はなんだったんだ。そのことをよく踏まえてくれ」などと語ることもあった。

 男性も接戦になると山根会長の意向に沿う判定を下すようになり、次第にそれが常態化していったという。「迫力があり、逆らえない。恐怖心に屈した自分が恥ずかしく、情けない。選手には本当に申し訳ない気持ち」と後悔を口にした。

 都道府県連盟の幹部らの告発状では、かつて奈良県連盟会長を務めた山根会長の意向に沿って、奈良県選手に有利な「奈良判定」があったと主張している。

 本紙の取材に応じた別のA級審判員の男性は「山根明会長の意向をくみ、過去の全国大会で奈良県代表の選手に有利な判定を下した」と証言。数年前の全国大会で奈良県と別の県の選手による試合で接戦があり、迷った末に「会長の機嫌を損ねたくない」などの思いから忖度(そんたく)して、奈良県選手の勝利と判定を下した。

不正判定疑惑を受け、開催中の全国高校総合体育大会・ボクシングでは全試合をビデオ撮影する異例の対応が取られている=2日、岐阜市で

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 男性は、山根会長の意に反した判定をし、試合後に会長からどう喝され、次の大会に呼ばれなくなった審判員を見てきた。「審判としてのプライドで、勝敗が明らかな試合では不正判定したことはない。でも、あの試合は接戦だったので…」と自責の念に苦しんでいる。

◆山根会長「進退考えず」

 日本ボクシング連盟の山根明会長は三日、日本テレビの番組に出演し、助成金流用問題などを巡る自身の進退について「この問題で進退というのは考えていない。連盟は何の落ち度もありません」と辞任を否定した。一連の騒動については「連盟の会長として、騒ぎが起きたことに関して責任を感じている。おわびを申し上げる」とも述べた。

 山根会長は二日には大阪市内で共同通信のインタビューに応じ、告発状で指摘された助成金の流用は事実と認めた。その上で審判の不正判定疑惑について「絶対ありません」と全面否定した。法的措置を取る可能性に関しては「考えている。名誉毀損(きそん)ですね」と検討する考えを示した。

 「奈良判定」の問題には「(不正を)強要したらすぐ話が出る」と介入を強く否定。全国大会を開催する都道府県連盟に対し、飲食など過剰な接待を求めているとの指摘には「こちらから要求したことはない」と反論した。

 

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