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【社会】

「自白映像で有罪」認めず 栃木女児殺害 高裁も無期

勝又拓哉被告

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 二〇〇五年に栃木県今市市(現日光市)で小学一年の吉田有希ちゃん=当時(7つ)=を殺害したとして、殺人などの罪に問われた勝又拓哉被告(36)の控訴審判決で、東京高裁(藤井敏明裁判長)は三日、無期懲役とした一審の裁判員裁判判決を破棄し、あらためて無期懲役を言い渡した。取り調べの録音・録画記録が一審で事実認定に使われたことを「違法」と批判し、同じ量刑なのにあえて破棄。自白の信用性を判断する手段として「強い疑問」を呈した。弁護側は即日上告した。

 勝又被告は捜査段階で「茨城県内の林道でナイフで多数回刺して殺した」と自白。この様子は検察側が録音・録画し、被告が身ぶり手ぶりを交えながら「こうやって両手で抱えて…」と供述する様子などが、一審宇都宮地裁の法廷で約七時間流された。

 被告は公判では「被害者には会ったこともない」と一貫して否認していた。地裁判決は被告の車の走行記録など客観的事実のみでは「犯人と認定できない」としたが、録音・録画の内容を重視し、殺害を認めた自白調書は信用できると結論づけた。

 藤井裁判長は判決理由で、一審判決が捜査段階の取り調べの録音・録画記録を基に有罪認定に結びつけたことを「違法」と断じた。録音・録画の制度化は、自白の強要がなかったかチェックする「取り調べの適正化のため」だったにもかかわらず、一審では映像での被告の供述態度に基づいて「犯人性を直接推認している」と批判した。

 藤井裁判長が「状況証拠を総合すれば被告が犯人と認められる」と判断した主な根拠は、被告が捜査段階で母親に宛てた手紙の内容だった。

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 「今回、自分で引き起こした事件、本当にごめんなさい。まちがった選択をしてしまった」。裁判長は「『事件』が本件殺人を指すと読むのが合理的」と述べた。

 藤井裁判長は控訴審の審理過程で、犯行の日時や場所について検察側に再考を促し、場所は「茨城県常陸大宮市の林道」から「栃木県か茨城県またはその周辺」、日時も十二時間以上の幅を持たせる起訴内容への変更を認めていた。

 判決では自白の信用性について、被害者を殺害し、遺棄したとする部分は信用できるが、殺害場所などは「虚構の疑いがある」と指摘。だが、起訴内容の幅が広がった点を考慮すれば「被告が犯人と認められる」とし、量刑については「犯行態様は極めて残虐で無期懲役が相当」と判断した。

 判決は、自白だけではなく客観証拠を重視する姿勢を見せたが、いつどこで幼い命が奪われたのか、解明されないままになった。

<栃木の小1女児殺害事件> 2005年12月1日午後2時40分ごろ、小学1年の吉田有希ちゃん=当時(7つ)=が下校途中に行方不明となり、翌2日に約60キロ離れた茨城県常陸大宮市の山林で遺体が見つかった。勝又拓哉被告は14年6月に逮捕され、捜査段階では殺害を認めたものの公判で否認。一審宇都宮地裁の裁判員裁判は、取り調べの録音・録画の内容などから自白調書の信用性を認め、無期懲役の判決を言い渡した。

 

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