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【社会】

<つなぐ 戦後73年>戦争体験 施設で聞き取り 高齢化 細る証言を危惧

インタビューで戦争体験を語る田村馨さん(左)=7月上旬、東京都荒川区で

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 終戦から七十三年がたち、戦争体験者の証言が集まりにくくなる中、少しでも多くの人の記憶を記録に残そうと、「戦場体験放映保存の会」(東京都北区)が、高齢者施設の利用者に着目して聞き取りを始めた。「体験を子や孫、その先の世代に残さなければ」という思いを掘り起こそうと、施設などに協力を呼び掛けている。 (原昌志)

 「軍事教練で銃の扱いが悪いと殴られた。天皇陛下のものを何だと。軍人勅諭も言えなかったら学校の恥だと言われて覚えた。思い出の一つですよ。良いか悪いか分からないけど」

 東京都荒川区内の高齢者通所施設で七月上旬、元自営業の田村馨さん(90)は記憶をたどった。十代だった戦争当時。勤労動員で軍需工場や消防隊員として働いたという。約一時間、保存の会のスタッフが家庭用ビデオカメラを回す前で、車いすから身ぶりを交えながら語った。

 保存の会は二〇〇四年に設立し、スタッフが元兵士らの自宅を訪ねるなどして、経験した出来事をインタビューしてきた。飢えとの戦いだった南方戦線、ミッドウェー海戦で沈没した空母赤城の艦内の混乱、旧満州からの引き揚げ…。映像の編集は基本的に行わず、中立・客観的に記録することを方針にしている。

 これまでに約二千七百人に上る証言を収録し、抜粋をインターネットで公開しているが、近年は収録のペースが落ち気味という。会事務局次長の田所智子さん(52)は「亡くなられる方が多くなり、戦友のネットワークも途切れつつある」と話す。

 総務省の人口統計などで終戦時に、当時の徴兵年齢の十九歳以上だった人口を目安にみると、会発足時の〇四年と比べて昨年時点で約五分の一の約百六十万人まで減った。いまの九十一歳以上にあたる。

 会は、高齢者施設を利用している戦争体験者が相当数いるとみて、今春、文書を郵送したり、直接訪ねるなどして都内の約五十施設に協力を依頼。これまで田村さんを含め三人にインタビューすることができた。

 介護度が重くなれば証言は難しく、協力に応じてくれる施設は多くない。ただ、地方の高齢者施設でも戦争体験を語る会などを開いている事例があり、保存の会は情報交換を進めている。

 田所さんは「施設側が『戦争の経験は悲しい出来事だから触れてはいけない』と思っているケースもある。でも、『聞かれなかったから話さなかっただけ』という人が結構いる。どこも施設は多忙で大変かもしれないが、貴重な体験談を残すために理解いただければ」と話す。

 保存の会への問い合わせは=電03(3916)2664(火、木、土、日曜日と祝日の日中)=へ。

 

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