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【社会】

無戸籍者の現実、舞台に あすから新宿で上演

新作「川辺月子のために」の稽古をする市子役の大浦千佳さん(右から3人目)ら出演者たち=東京都新宿区で

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 民法の規定と親の事情から出生届が出されず、戸籍がないまま暮らしている「無戸籍者」をテーマにした演劇が二十二日〜九月二日、東京・新宿で上演される。無戸籍の女性の人生をたどる、二〇一五年八月初演の「川辺市子のために」の再演と、続編となる新作「川辺月子のために」の二本立て。ミステリー仕立てで少しずつ謎を明らかにしていくことで、自分の身分を証明できない過酷な現実を伝える。 (神谷円香)

 「市子」では、無戸籍のまま生きてきた主人公の市子が行方不明となり、関わった人たちが自分の知る市子像を語っていく。「月子」では、市子の妹で難病の筋ジストロフィーを発症した月子の人生をたどり、無戸籍者を支援する団体なども登場する。

 作・演出を手掛けた渋谷区の劇団「チーズtheater(シアター)」の戸田彬弘(あきひろ)さん(35)が「市子」の着想を得たのは一五年。病死した後輩の役者のフェイスブックに、その死を知らない人からの「誕生日おめでとう」との書き込みを見て「もういないのに、存在しているように見える違和感」を覚えた。それを表現しようと調べるうち、逆に「存在するのに戸籍上は存在しない」人がいると知った。

 作品では、就学が容易でない、社会保障が受けられないなどの困難を抱える中で、同世代に設定した市子がどう生きたかを想像し、時代背景も盛り込んでリアリティーを持たせた。

 戸田さんは一五年の初演後、無戸籍者とその家族を支える「民法772条による無戸籍児家族の会」の井戸まさえ代表(52)と会い、身分証がないために就職に困る無戸籍者の現実などをさらに学んだ。それらを踏まえて、より社会問題として訴える内容の新作「月子」を作った。

作・演出の戸田彬弘さん

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 無戸籍問題は、具体的に伝えるほどプライバシーが侵害されがちで、表に出して訴えにくいジレンマもある。「フィクションならそれを表現できる。『法の犠牲者』がいると伝えなければならない」と戸田さん。市子を演じる大浦千佳さん(30)も「当事者は自分で無戸籍とは明かさない。そういう人がこの社会にいる、と気づいてほしい」と話す。

 会場は新宿区新宿一、サンモールスタジオ。料金は四千三百円、「市子」「月子」二作通し券は七千五百円。問い合わせはチーズtheater=電090(9204)3288、メールcheesetheater2015@gmail.com=へ。

<無戸籍問題> 民法772条では、離婚後300日以内に生まれた子の父親は、母親の前夫と推定するとしている。この規定により、実際の父親ではない前夫を戸籍上の父親とされたくないなどの理由で、母親らが出生届を出さないケースがある。「民法772条による無戸籍児家族の会」(東京)によると、こうした理由で無戸籍者として暮らしている人は、全国で少なくとも1万人いると推定される。就学や就職、結婚などで困難に直面する。同会は当事者らの相談に応じている=電090(8048)8235。

 

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