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【社会】

危ない!バス内転倒 国交省検討会で対策議論 堀野定雄さんに聞く

(上)都営の旧型ノンステップバス車内。優先席(手前右側)は横向きで、不安定な姿勢になりやすいとされる (下)新型の車内。優先席(手前右側)はすべて前向きとなり、不安定な姿勢になりにくいとされる

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 バスの車内で高齢者らが転ぶ事故の防止には、運転士や事業者の努力だけでは限界がある。国土交通省の検討会で長年、対策を議論してきた神奈川大客員研究員の堀野定雄さん(77)=人間工学=は、行政や乗客も含め、社会全体で安全を支える大切さを指摘する。 (聞き手・清水祐樹)

 国交省は、私が座長を務めた検討会の提言(二〇〇六年度)を受け入れ、全国的な現場調査を実施するなどの対策をとってきた。警察統計で〇八年以降、バスの車内事故が減少しているのは、この効果が大きい。

 国交省の対策は▽乗客は停車してから離席を、運転士は着席してから発車をそれぞれ周知徹底する▽分かりやすい車内アナウンスを実施する▽バス停でバスが歩道に対して平行に正しく止まれる(「正着」と言う)ような社会支援をする−など複合的だ。

 ただ、これで検討会の提言を全て実現できているわけではない。発車時や小さい事故は防ぎきれず、さらなる深掘りが必要だ。

 重要なのは、事故の要因は運転士の「不注意」だとする考え方からの脱却。むしろ、「不注意」を誘引する人間や車両、道路環境、管理といった複合的な要因を科学的に分析し、それに基づく対策を重視することが大切だ。

 乗降口の段差をなくしたノンステップバスは、バス停に正着すれば段差なく乗り降りできるが、他の車両がバス停近くに止まっていると、歩道に対して斜めに停車せざるを得ない。乗客は歩道から車道に降り、入り口のステップを上らなければならなくなる。

 この問題も、ちょっとした工夫で解決できる。タクシーはバス停近くで客の乗降をしない、トラックは荷物の積み降ろしをしない、警察は重点的に違法駐車を取り締まる、など関係機関が同じ方向を目指して協力することが求められる。

 事故を防ぐのは運転士やバス事業者だけでなく、乗客、バスメーカー、道路を管理する行政などあらゆる関係者に出番があるということ。慎重な運転やゆとりある運行ダイヤに加え、乗客には安全な行動が、メーカーにはユニバーサルデザイン(誰もが利用しやすいデザイン)に配慮したバスの製造が、行政には利用者の視点に立った環境の整備などが求められる。

 国民もバスの社会的役割について認識を深め、乗用車でバスを無理に追い越したり、前方に割り込んだりすべきではない。道路という限られた空間は、互いに配慮しつつ使わなければならないという「公共性の尊重」への理解を深め、共有することが大切だ。

◆07年から事故防止キャンペーン

 乗り合いバスの車内事故は二〇〇〇年以降、警察の統計で増加傾向にあり、〇六年は全国で千二百十四件に上った。国土交通省が設置した、事故の要因を分析する産官学協働の検討会は〇六年度に安全対策を提言した。

 提言を受け、日本バス協会は〇七年から車内事故防止キャンペーンを始め、ゆとりを持った乗降や運転を呼び掛けるなどしている。警察統計では車内事故は減り始め、一七年は四百十二件と、〇六年の三分の一になった。

 一方で、近年の警察統計は都内のけが人の数が都営バスのけが人より少なく、実態を正確に反映しているのかという問題が本紙の取材で浮上している。国交省は安全対策を議論し続けているが、基礎データとして警察統計を使っている。

<ほりの・さだお> 1941年生まれ、大阪府出身。早稲田大大学院理工学研究科博士課程単位取得満期退学。神奈川大助教授、同大学高安心超安全交通研究所長などを経て2016年から客員研究員。国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故要因分析検討会」の座長も務めた。

◆ご意見や体験談募集

 安全で快適な乗り合いバスのあり方について、一緒に考えてみませんか。ご意見や体験談を募集します。連絡先を明記の上、メールはshakai@tokyo-np.co.jp、ファクスは03(3595)6919、郵便は〒100 8505(住所不要)東京新聞社会部「バス」取材班へ。

 

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