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【社会】

研究厳しく温かく ばか野郎。金は準備する

今年のノーベル医学生理学賞受賞が決まり、研究室で記念撮影する京都大の本庶佑特別教授(中央右)=ノーベル財団のツイッターから

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 かつての教え子や研究仲間は本庶佑さんについて「世間的には研究に厳しいイメージが強いかもしれないが、決してそれだけではない」と口をそろえる。

 本庶さんの研究室に約二十年間在籍した国立感染症研究所ウイルス第二部長の村松正道さん(52)は一九九九年ごろ、本庶さんから「抗体の抗原記憶」という免疫上、重要な分子を探すよう命じられた。実験に費用がかかり過ぎるために後回しにしていたところ、本庶さんから呼び出され「何であの研究をせえへんのや」と詰問された。

 お金のことを説明すると怒声が返ってきた。「ばか野郎。金なんてどうでもいい。君が一億必要ならわしはそれを準備する。一億で不足ならわしの家を売ってでもお金をつくる。だから、君はお金で実験ができないなんて言うな」

 村松さんは研究に力を注ぎ始め、重要な分子の発見につなげた。「そこまで言われたら『寝ずに働きます』ってなる。先生の、ここはやるべきだというにおいをかぐ力はすごい。何か目的を見つけて達成できる人間だからみんなついていく」と、類いまれなリーダーシップに敬服する。

 長年交流がある大阪大の岸本忠三(ただみつ)元学長(79)は「相手によって態度は変えない」と評する。本庶さんは国の総合科学技術会議の議員なども歴任したが、政策が間違っていると思えば大臣相手でも「違う」と意見を述べ、持論を貫いてきた。

 一月に京都のホテルで催された研究室のOB会。約百人の教え子の会費は、すべて本庶さんが支払った。数え年で喜寿の誕生日を控えていたが、「喜寿祝いにはするな」と、進行役らにきつく伝えていたという。「みんなが頑張ってくれたからここまで来られた」。壇上のあいさつで弟子たちに注がれるまなざしは温かかった。 (深世古峻一、森耕一)

 

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