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【社会】

応用への執念 実を結ぶ 本庶氏ノーベル賞

 体を傷つける手術でも、副作用が強い抗がん剤でもなく、本来の免疫力を高めて腫瘍を小さくする免疫療法。発想は百年ほど前に生まれたが、実現は難しかった。画期的な新薬開発につなげた本庶佑さんは自らを「エゴイスト」と呼び、「知りたいこと、実現したいことを中心に考えるべきだ」という信念と、「研究成果を必ず応用する」という執念が実を結んだ。

 免疫細胞表面のPD−1というタンパク質を制御すると、がんを攻撃できるという発見が受賞につながったが、一九九二年にタンパク質を発見した当時、その働きはよく分かっていなかった。「構造がユニーク。必ず何か出てくる」と研究したが、機能を突き止め、論文発表までに七年を要した。「学位がとれない」と嘆く大学院生もいたが、「絶対やれる」と研究チームを鼓舞。二〇〇二年にはマウスのがんを治した。

 人の治療へつなげる道も平たんではなかった。

 小野薬品工業(大阪市)と共同で新薬開発に乗り出すことにし、協力する大手製薬会社を探したが、大手はそろって二の足を踏んだ。当時、がんの免疫療法は世界で失敗続き。小野薬品工業も一度は「降ります」と伝えてきた。

 「それでも本庶さんは、人の臨床に使わないといけないという執念があった。自分でベンチャーの相手も探した」。当時を知る共同研究者の湊長博・京都大副学長(67)は振り返る。

 研究の可能性に気づいた米ベンチャーが〇五年に名乗りを上げると、小野薬品工業も再び手を挙げた。研究は加速し、新薬オプジーボは生まれた。その成果は英科学誌が「われわれは今、がんにおけるペニシリンの発見とも言うべき時期にいる。がんの終わりの始まりだ」と評している。 (森耕一、勝間田秀樹)

 

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