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【社会】

ヘイト規制、LGBT差別禁止 都の人権条例 歓迎と懸念

 ヘイトスピーチを規制し、LGBTなど性的少数者への差別を禁止する東京都の人権尊重条例案は、五日の都議会本会議で成立する見通しとなった。当事者からは歓迎の声が出る一方、表現の自由の制限につながりかねないとの懸念や、企業や教育現場で性的少数者への対応を具体的に進めるよう求める意見も出ている。

◆「現状打破のきっかけに」

 法律家や研究者らでつくる外国人人権法連絡会の師岡康子弁護士は、「ほかの県などでも制定の検討が進むのでは。ヘイト対策が進まない現状を打破するきっかけになる」と評価する。

 師岡さんによると、二〇一六年にヘイトスピーチ対策法が施行された後、ヘイトデモは減少したが、最近は戻りつつある。デモの場所は、新宿や銀座など東京に集中しているという。

 条例ではヘイトスピーチを防ぐため、公共施設の利用を制限する基準をつくる。同様の基準は川崎市や京都府などが条例ではなくガイドラインで設けている。

 ただ、ガイドラインを適用して事前に公共施設の利用を許可しなかったケースはないという。憲法では表現の自由が保障され、自治体の首長が利用の可否を判断するのは難しい。条例化で制限しやすくなるかは不透明だ。

 師岡さんは「都は制限する基準は今後つくるとし、条文に明示していない。知事に白紙委任するのはおかしい。権力の乱用を防ぐための仕組みも備えるべきだ」と指摘する。

 条例では、集会やインターネット上で差別的言動があったと知事が認めた場合、活動の概要などを公表したり、ネット上の動画などを削除要請したりできるようになる。田島泰彦・元上智大教授(メディア法)は「表現の自由が抑圧される危険性を秘めている。権力への批判なども規制の対象にされかねない」と危ぶむ。

 基準づくりや条例の運用では、表現の自由との線引きが課題になる。

  (榊原智康)

◆「明文化 意味大きい」

 LGBTなど性的少数者の団体でつくる全国組織「LGBT法連合会」事務局長代理の増原裕子さん(40)は、「不当な差別的取り扱いをしてはならないと明文化した意味は大きい。行政や企業が対応を進める根拠になる」と歓迎した。

 今年五月、経済評論家の勝間和代さんとのパートナー関係を公表。二人で集会に参加し、都条例に差別禁止を入れるよう求めてきた。「就職活動で落とされたり、職場を解雇されたりする例がある。病院でも家族と同じようにパートナーの病状説明を受けられる対応を望みたい」と話した。

 実効性のある運用にするため「啓発や相談の基本計画づくりに当事者を参加させて」と求める。国でも超党派で立法化が議論されており、「都条例が弾みになって差別禁止が明記されれば」と影響を期待する。

 都内の公立小非常勤講師の鈴木茂義さん(40)は、条例が制定されれば「研修などで教員や保護者が性の多様性について知る機会が増える」とみる。

 文部科学省は二〇一五年、LGBTの児童生徒への配慮を求める通知を出した。一方、学習指導要領にLGBTや多様な性に関する記述はなく、「授業で教えにくかったり、当事者の子どもの悩みに対処しづらかったりする」と明かす。子どもの相談窓口の必要性も感じてきた。

 自身は、職場でゲイ(男性同性愛者)であることを伝えた。「条例が教職員や保護者の行動を変えることにつながれば」と語った。

 労働政策研究・研修機構の内藤忍(しの)副主任研究員は「差別禁止が入ったことは評価したい」としつつ、実効性を担保する仕組みがないと指摘。「差別があった場合にどう指導するのか。損害を受けた当事者らの救済措置もない。これらを基本計画に盛り込むことが大切」と話した。

  (奥野斐)

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