東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 10月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

葛飾ゼロメートル地帯、命守るゴムボート 水害備え町会や企業配備

6月の合同訓練で、ゴムボートで人や物資を運ぶ住民ら=東京都葛飾区で(同区提供)

写真

 七月の西日本豪雨の被災地で、人命救助に威力を発揮したのがゴムボート。海抜ゼロメートル地帯が広がり、大規模水害への備えが不可欠な東京都葛飾区では、町会などが自主的にゴムボートの購入を進め、今年初めて実際に川に浮かべて合同訓練を行った。区によると、JR新小岩駅周辺に十五艇が自主配備されている。(加藤健太)

 新小岩駅の北側で約三万四千人が暮らす新小岩北地区。西の荒川、東の江戸川、二つの川が同時に氾濫したら、地区全体が二週間以上水につかる−。江東五区(墨田、江東、足立、葛飾、江戸川)の協議会は八月、このような想定を発表した。

 「被害が広範囲になれば、行政の救助の手が回らず、自宅で取り残される人が出る」。こう心配していた同地区住民は十年ほど前から、町会単位でゴムボートの購入を進め、計九艇を配備した。災害時の救助や食料の配布に使う。

 ガソリンエンジン付き、五〜六人乗りで操縦免許がいらないタイプを選んだ。昨年全ての七町会で配備が終わり、今年六月に初の合同訓練も実施。住民ら二百人が、実際に区内を流れる中川に浮かべ、人や物資を対岸に運んだ。

 旗振り役は、東新小岩七丁目町会の中川栄久(えいきゅう)会長(82)。区一帯が水没した一九四七年のカスリーン台風では、屋根の上で二週間以上過ごした。その苦い体験を基にボートの必要性を町会で説き続け、二〇〇九年に購入にこぎつけた。

 「初めは『宝の持ち腐れ』と聞き入れてもらえなかった」が、熱意は周りの町会にも伝わり、配備の輪が広がった。

 中川さんが「画期的」と喜ぶのが地元企業の協力。インク原料の製造販売事業などを手掛ける大成ホールディングスは、会社のある西新小岩三の町会用にボートを自社で購入、膨らませた状態で倉庫に保管している。

写真

 従業員六十人を率いる徳倉俊一社長(48)は「昼間の災害なら手助けできる社員が何人もいる。昭和初期からこの地で事業をしているので力になりたかった」。

 一方、新小岩駅の南側でも、六つの町会全てが一艇ずつゴムボートを備えている。お年寄りらを安全に避難させようと、町会をまとめる住民組織「新小岩地域防災会議」が三年前、区の補助を使って購入した。

 副事務局長の伊藤雅良さん(61)は、西日本豪雨でゴムボートが人命救助に役立ったことに触れ「取り組みが間違いではないと感じた。さらに訓練を重ねたい」と意気込む。

 こうした取り組みは「他地区では聞いたことがない」という葛飾区地域防災課の五十嵐勝治課長は「災害が同時多発すれば行政側の人手や資材は限られる。そこを補ってもらえるのはとてもありがたい」と話した。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報