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【社会】

座間事件 今月末で1年 共感求める若者、今も

事件の被害者に自分を重ねる20代女性

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 神奈川県座間市のアパートで九人の遺体が見つかった事件は、今月末で発覚から一年。今も会員制交流サイト(SNS)には自殺願望の書き込みが絶えない。SNSを通じて共感を求めたり、悩みを聞いてくれる相手の家に身を寄せたりした経験のある女性たちは、「私が殺されてもおかしくなかった」と被害者に自分を重ねる。 (神田要一)

 「死にたい」。神奈川県で一人暮らしする女性(27)は、大学時代からツイッターで複数のアカウントを使い、人に言えない本音を書き込んだ。「分かるよ」「私も今死にたい」。共感の声が返ってくる。「ツイッターをしていないと不安」と思うほど依存した。

 幼いころから親が過干渉で有名小学校に入るため幼稚園から塾に通い、失敗すると怒られた。親を喜ばせたい一心で「いい子」の仮面をかぶったが、周りの目が気になり高校の時から精神科に通うようになった。

 大学で保育士資格を取ったが、入退院を繰り返し、働けていない。「何のために生きているのか」。今春、睡眠薬と酒を飲んで橋の欄干から川に飛び込もうとし、警察に保護された。

 過去にはツイッターに薬の写真や服用した量を投稿し、批判された。嫌な思いをしてツイッターを一時やめたが、絶てなかった。「気持ちを吐き出す場所がない。誰かとつながっていたい」と先月、新たなアカウントで再開した。

 白石隆浩被告(28)は、ツイッターに自殺願望を書き込んだ若者らを言葉巧みに自分のアパートに誘い込み、昨年八〜十月の二カ月間で九人を殺害したとされる。事件の衝撃は忘れないが「共感してくれると、いい人だと信じてしまう。今もネットが居場所」という。

 「オレと一緒でよかったじゃん」。東京都内の女性(22)は、昨年十一月、白石被告の逮捕を報じるテレビを見て、同居していた中年男性がつぶやいた言葉を忘れられない。被害者と自分を重ね、急に怖くなった。

 昨夏、アルバイト先の同僚女性から男性を紹介された。「SNSで知り合った人」とのことだった。

 一カ月ほどして男性宅で同居状態になると態度が一変。「女を磨け」と水商売で働かされ、ささいな理由でたたかれて顔にあざができた。「おまえに分かってほしいから言ってるんだよ」。激怒した後は優しくなり、心身を支配された。

 アイドルになるのが夢だった。短大で保育士の資格を取ったが就職せず、ダンスレッスンに熱中。うまくいかず悩んだ時、親身に話を聞いてくれる男性に恋心が芽生えた。

 「私のことを考えてくれていると思っていたのに、実際は都合よく扱われていただけだった」。同居して二〜三カ月後、男性の家を出た。「つながった相手が白石被告だったら…。殺されるという言葉が身近にあると分かった」

◆「一人じゃないよ」NPO法人、LINEで相談

 10〜20代の女性を支援するNPO法人「BOND(ボンド)プロジェクト」(東京)は、厚生労働省の事業で無料通信アプリ「LINE(ライン)」を活用し相談を受け付けている。週5日、女性スタッフがSOSを求める相談者と文字で対話。座間事件を受けて3月から始め、月1000件以上のメッセージが届く。

 代表の橘ジュンさんは「匿名でしか本音を話せないのは、いろいろ経験して大人を信用できなくなっているからでは」とみる。

 橘さんらは、相談内容に応じて少女らに直接会いに行き、BONDの施設で保護している。「最初は文字だけでも、やりとりを重ねることで一人じゃないと思ってもらえるようにすることが大切」と強調する。

 

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