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【社会】

複数医学部、入試不正疑い 大学名 文科省公表せず

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 東京医科大(東京都新宿区)の不正入試問題を受けて文部科学省が全国八十一の国公私立大学医学部医学科の入試状況を調査したところ、複数の大学で女子や浪人生に不利な扱いをしていた疑いがあることが分かった。十二日に柴山昌彦文科相が発表した。九月に公表した書面調査では全大学が「不適切な操作はない」と回答しており、大学側に隠蔽(いんぺい)の意図がなかったかが問われそうだ。 (原尚子、井上靖史)

 文科省は、過去六年間の男女の合格率などを聞いた書面調査で女子の合格率が男子を下回った大学を中心に、約三十校を訪問調査した。募集要項などで事前に知らせず、男女や浪人の年数によって合否の扱いに差をつけたり、特定の受験生を優先的に合格させたりしたことが客観的に判断できる資料があったという。

 文科省は、大学に説明を求めている段階とし、大学名や学校数は明らかにしていない。本紙の取材に、合格率の男女差が最も大きい順天堂大は訪問を受けたとした上で「公表などの対応を検討中」と回答。二位の東北医科薬科大は「ありのままを報告した。不利な扱いは全くしていない」とコメントした。三位の昭和大、四位の日本大は「回答は差し控える」、六位の慶応大は「調査の有無は回答できないが、得点調整は行っていない」とした。

 柴山氏は「公正に実施されるべき入試でこのような事態に至っていることは問題だ」と指摘し、受験生の混乱を防ぐため、十月中に中間報告をまとめるとした。しかし、文科省は中間報告で、不正が疑われる校名や大学数は公表しない方針。担当者は「捜査権がなく、不正と認定できない」としている。

 柴山氏は不正が疑われる大学に対し、「事実と背景などを自主的に公表するよう促している」と述べ、残りの約五十校全てにも訪問調査を行った上で年内に最終結果をまとめるとした。

 文科省は九月、過去六年間の男女・年齢別の受験者数と合格者数、入試に関する学内規則とマニュアルの有無などを聞いた書面調査の速報を発表。全体の78%に当たる六十三校で、過去六年間の入試で女子の合格率が男子を下回っていたと明らかにした。

 調査のきっかけとなった東京医大の入試では、女子や三浪以上の受験生を一律減点したり、特定の受験生に不正加点を行っていた。

◆大学は疑念払拭を 文科省は差別正せ

 東京医大だけではなく、ほかの複数の大学にも広がった入試不正疑惑は、公正であるべき大学入試への信頼を大きく揺るがすものだ。

 文科省が九月に公表した書面調査では、全国に八十ある大学医学部医学科の約八割で男子の合格率が女子を上回っていた。はっきりと「男性優位」の傾向が示されたが、東京医大をのぞく全大学は「不正はない」と回答している。

 他の学部の入試では、男女の合格率は同比か女子の方が多い。医学部だけが違い、長年、「大学側は女子受験生の合格者を抑制している」とうわさされてきた。大学側は、「女性差別」の疑念を自ら払拭(ふっしょく)すべきだ。

 もともと、日本は女性医師の割合が低い。経済協力開発機構(OECD)加盟国の女性医師の割合は平均39・3%で、日本は20・4%(二〇一五年現在)と大きく下回る。

 背景には、医療現場が女性医師を敬遠し、採用しないなどの差別が公然と続き、しかも問題視されてこなかった経緯がある。医学部では大学入試が企業の入社試験の役割を果たし、大学が病院の求める人材を入学させようとする意図が働くとも言われる。しかし教育機関である大学が、女性や浪人生の教育を受ける権利を奪うことは許されない。

 文科省は十月中にまとめる中間報告で不正の疑惑がもたれる大学名については公表せず、大学側の自主的な公表を求める方針だ。しかし十二月の出願開始を前に、疑わしい大学が特定されないままこの時期に受験校を絞らなければならない受験生の負担は大きい。文科省は、大学名を公表して差別を正すべきだ。 (原尚子)

 

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