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【社会】

東電強制起訴 武藤元副社長「津波予測信頼性ない」

被告人質問に答える武藤栄元副社長=イラストと構成・勝山展年

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 原発事故を招いた大津波は本当に想定外だったのか−。東京電力福島第一原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣三人の公判は十六日、被告人質問が始まり、最大のヤマ場を迎えた。先陣を切った武藤栄(さかえ)元副社長(68)は津波対策のキーパーソン。「多くの方に言葉では表せないほどのご迷惑をかけた」と頭を下げる一方、大津波の襲来予測には「信頼性はないと思った」と疑問を呈した。 (蜘手美鶴、小野沢健太)

 濃紺のスーツ姿で出廷した武藤元副社長。冒頭に原発事故への思いを問われると、「事故で亡くなられた方々、ご遺族らとても多くの方に言葉では表せないご迷惑をおかけしました。当事者として深くおわび申し上げます。誠に申し訳ございませんでした」と約三秒間頭を下げた。

 仕事の信条を問われ、強調したのが「正直さ、誠実さ」。利益よりも安全性を優先させる仕事のやり方を指導してきたとした上で、「誠実さはすべての仕事の基礎になる態度と思っています」と述べ、傍聴席からため息や失笑が漏れた。

 午前中の被告人質問が終わると、傍聴人からは失望の声が聞かれた。

 水戸市の菅野正克さん(74)は、父健蔵さん=当時(99)=が原発事故時、原発から四・五キロの双葉病院に入院しており、避難でたらい回しになった末、三カ月後に衰弱死した。「父に報告できるような裁判になればいいが、この様子では…」と表情を曇らせた。

 武藤元副社長が大津波の予測を信頼性がないと述べた点について「なぜそう思うのか詳しく説明せずに否定するだけ。理由が聞きたいのに」。「事故を起こした当事者なのだから、私たち遺族にも納得がいく説明をする責任があるはずだ」と強調した。

 福島県いわき市の佐藤三男さん(74)は「冒頭に誠実さを大事にしていると言うから、期待していたのに、やっぱり本当のことを話す気はないんだとがっかりした」。津波対策の話になると、早口になって自らの責任を否定するような発言を繰り返した武藤元副社長に対し、「彼は逃げているよ。被災者に向き合ってほしい」と注文した。

 

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