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【社会】

東電・武藤元副社長「大津波対策指示せず」 原発事故 強制起訴

武藤栄元副社長

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 東京電力福島第一原発事故を巡り、津波対策を怠ったとして業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣三人の公判が十六日、東京地裁(永渕健一裁判長)であり、津波対策の実質的な責任者だった武藤栄(さかえ)元副社長(68)の被告人質問があった。弁護側から、三人が出席した同社首脳による二〇〇八年二月の「御前会議」で大津波に対応する新たな方針が了承されたかを問われ、「方針が決まったことは一切ない」と全面的に否定した。

 公判の焦点は、旧経営陣が海抜一〇メートルの原発敷地を超える高さの津波を予測し、対策を取れたかどうか。中でも武藤元副社長は二〇〇八年六月、最大一五・七メートルの津波の可能性を試算した結果を部下から直接聞いていたとされ、危険性をどこまで認識していたかが注目されていた。

 これまでの公判では、〇八年二月の御前会議で原子力設備管理部門のナンバー2の社員が、国の地震予測「長期評価」に基づいて新たな津波予測を試算することを報告し、了承されたことが明らかにされていた。

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 しかし武藤元副社長はこの日の被告人質問で、「この会議で長期評価が話題になったことはない」と否定した。

 長期評価について知ったのは、同年六月の会合で、そのとき初めて一五・七メートルの試算を知ったとした上で「唐突感があり、この数字は一体何だろうと思った」と述べた。また長期評価について「(部下からは)『信頼性はない』と説明を受け、私自身もそう思った」と話し、部下に対策案を練るよう指示したかについては「私自身が『検討をしろ』と指示を受けたこともなかったし、対策を取ると決められるような状況ではなかった」と主張した。

 これまでの公判で検察官役の指定弁護士は「大津波は予測可能で、三人が費用と労力を惜しまず、義務と責任を果たしていれば事故は起きなかった」と訴えている。十六日午後には指定弁護士からの質問がある。

 ほかに強制起訴されているのは、勝俣恒久元会長(78)と武黒(たけくろ)一郎元副社長(72)で、いずれも無罪を主張。月内に被告人質問が予定されている。

◆技術面の実質責任者

 武藤栄元副社長は、東大工学部で原子力工学を専攻し、一九七四年に東電に入社。原子力発電部の原子力技術課長、福島第一原発技術部長など、技術畑を歩んだ。

 二〇〇五年六月、執行役員として原子力・立地本部副本部長に就任。〇八年六月には常務に昇格した上で同副本部長を務め、同原発の津波対策が議論された際は、技術面での実質的な責任者の立場にあった。

 一〇年六月には原子力担当の副社長となり、一一年三月の原発事故を迎えた。事故三日後の記者会見では、原子炉の炉心部が溶け落ちる「炉心溶融」が起きた可能性を把握していたのに、言及しなかった。

<東京電力旧経営陣の刑事裁判> 2011年3月の福島第一原発事故で近隣病院の患者ら44人を死亡させるなどしたとして、東電の勝俣恒久元会長ら旧経営陣3人が業務上過失致死傷罪に問われた刑事裁判。福島県民らの告訴・告発を東京地検は不起訴としたが、検察審査会は二度にわたり「起訴すべきだ」と議決。3人は、原発の敷地の高さを超える津波を予見できたにもかかわらず、対策を怠ったとして16年2月に強制起訴された。

 

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