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【社会】

原発公判 東電元副社長 津波対策 先送り否定 部下証言と真っ向対立

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 東京電力福島第一原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣三人の公判が十六日、東京地裁(永渕健一裁判長)であり、原発の安全対策の実質的な責任者だった武藤栄(さかえ)元副社長(68)の被告人質問があった。事故の三年前、新たな津波対策を先送りしたのは武藤元副社長だったとの趣旨を部下らが証言している点について、「先送りというのは全くない。大変心外だ」と語気を強めて反論した。 (池田悌一)

 ともに強制起訴された勝俣恒久元会長(78)、武黒(たけくろ)一郎元副社長(72)が弁護人の後方席に座る中、先陣を切って被告人質問に臨んだ武藤元副社長。冒頭、「当事者として誠に申し訳ございません」と頭を下げたが、自身の責任に質問が及ぶと、身ぶり手ぶりを交えながら責任を否定した。

 公判の焦点は、旧経営陣が海抜一〇メートルの原発敷地を超える高さの津波を予測し、対策を取れたかどうか。中でも武藤元副社長は最大一五・七メートルの津波を試算した結果を部下から直接聞いており、危険性をどこまで認識していたかが注目されていた。

 公判での元社員らの証言によれば、津波対策の見直し作業中だった二〇〇八年二月、新たな対策は国の地震予測「長期評価」に基づいて策定する方針が幹部会議で了承された。

 長期評価ではじかれた試算は、従来の想定の三倍近い高さ。元社員らは、六月に原子力・立地本部副本部長の武藤元副社長に試算結果を伝えると、「水位を下げられないか」と言われ、対策の詳細を検討するよう指示された、と証言した。

 七月には防波堤の設置などで数百億円かかると報告。すると武藤元副社長は長期評価に基づく対策を取るのではなく、試算手法自体を「研究する」と指示。ある元社員は「時間稼ぎだ」と証言し、検察官役の指定弁護士は「対策の先送りだ」と指摘していた。この日の被告人質問で武藤元副社長は、二月の会議について「機関決定の場ではない」とした上で、長期評価について「(部下から)『信頼性はない』との説明もあり、私もそう思った」と主張。「『研究しよう』と私が発言したが、別の外部機関の意見を聞こうという意味だ。先送りではない」と訴えた。

<東京電力旧経営陣の刑事裁判> 2011年3月の東京電力福島第一原発事故を巡り、東電の勝俣恒久元会長ら旧経営陣3人が業務上過失致死傷罪に問われた刑事裁判。3人は津波を予見できたにもかかわらず、対策を怠って近隣病院の患者ら44人を死亡させるなどしたとして、16年2月に強制起訴された。

 

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