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【社会】

LGBTと私 考える39分 自主映画、異例ロングラン

映画「カランコエの花」の一場面=(c)2018/中川組

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 LGBTなど性的少数者に対する周囲の「配慮」が、逆に当事者を傷つける可能性もある−。そんな難しいテーマを繊細に描いた短編映画「カランコエの花」が、7月の一般公開から異例のロングラン上映を続けている。監督の中川駿(しゅん)さん(31)=東京都武蔵野市=は「映画は、当事者を特別視していた自分への反省文でもある。見る人にも当事者とどう向き合うか考えるきっかけにしてほしい」と話している。 (神谷円香)

 舞台は高校二年生のクラス。ある日、唐突に「LGBTについて」の授業が行われる。このクラスだけの授業だと知った生徒たちが「当事者がクラスにいるのでは」と探り合いを始める。タイトルにもなったカランコエの花言葉は「あなたを守る」。誰が、何を守るのか。事件の謎解きのような三十九分間だ。

 中川さんが監督と脚本・編集を手掛けた。イベント会社勤務を経て、映像ディレクターとして独立した二年前、百二十万円で自主制作した。同性カップルに結婚と同様の関係を公的に認める「パートナーシップ制度」を導入する自治体などが話題になっていたことからLGBTをテーマに選んだ。ロケには茨城県立那珂高校(同県那珂市)が全面協力し、生徒がエキストラ出演。高校生のリアルな日常が映像にあふれた。

映画「カランコエの花」について話す中川駿監督=東京都千代田区で

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 あえて当事者の話は聞かなかった。当初は「取材しないと描けないのでは」と構えていたが、相談した映画関係の友人に「異性愛だったらわざわざ取材しないはずだ。その考えが差別的」と言われたからだ。

 それでも「当事者は映画をどう受け止めるのか」と不安だった。しかし、杞憂(きゆう)だった。性的少数者がテーマの作品を集めた昨年七月の映画祭「レインボー・リール東京」でグランプリを獲得。東京・新宿で今年七月、一週間限定の上映は満員御礼の盛況ぶり。現在は渋谷などで上映中だ。

 ロングランを支えているのが会員制交流サイト(SNS)だ。同様に自主制作で大ヒットした映画「カメラを止めるな!」をもじった「#カランコエを止めるな」のハッシュタグも登場。「二回目ならではの発見というか気づきがあった」とリピーターらが感想を記して作品を広めている。ファンたちはそうした活動を「水やり」と呼ぶ。

 ゲイであることを公表して活動する一般社団法人fairの松岡宗嗣代表理事(24)は「当事者の葛藤ではなくその周りの人、つまりLGBTを取り巻く社会そのものをリアルに表していると思う」と評価する。

 

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