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【社会】

<取材ファイル>鈍い対応 死の真相どこに 駅伝職員熱射病死 

 埼玉県川越市の川越少年刑務所の男性職員が熱射病で死亡した九月の駅伝大会を巡り、主催した法務省東京矯正管区の対応の鈍さが際立っている。そもそも管区は死亡を公表しておらず、職員が倒れるまでの経緯を詳しく調べ始めたのも、今月三日に本紙が報道した後だ。いまだ状況ははっきりせず、遺族は気持ちを整理できていない。 (小野沢健太、山田雄之)

 大会は九月八日、東京都板橋区の荒川河川敷などで開かれた。隣接する練馬区の最高気温は三三・六度。日本スポーツ協会が「持久走の中止」を求める基準の三一度を超えていた。

 九月中旬に寄せられた内部情報に基づき、複数の出場者に取材すると、亡くなったのは岩田一悟郎さん(32)と判明。会場に給水所はなく、飲料を持って走ることはできたが、チームメートからの給水も禁じられていた。東京矯正管区の担当者に質問をぶつけると、事実関係をおおむね認め、公表しなかった理由は「職務中の事故ではなかったから」と答えた。

 本紙報道の翌日、岩田さんの母親(71)の元に匿名の投書が届いた。

 「一悟郎さんは体調が悪くなったからか、途中から歩いていた。しかし、上司の男性が自転車で近寄った後、また走り始めた」。母親が知らなかったことばかり。「あおられたのでは」との記載もあり、川越少年刑務所に連絡を入れた。すぐ訪ねて来た所長は「きちんと調べて返事します」と約束した。

 東京矯正管区の取りまとめで、ようやく聞き取り調査を開始。他の参加チームにも目撃情報を寄せるよう求めた。調査の過程で「自転車で並走していた職員がいた」ことを確認。管区は取材に対し、「『無理するな』という声掛けはあったようだが、証言にばらつきがあり調査は継続中。現時点で岩田さんを追いつめるような不適切な行為は判明していない」という。

 「本当のことはきっと分からないんでしょうね」と岩田さんの母。「少しずつ落ち着かないと。一悟郎のことばかり考えていたら、身も心もおかしくなっちゃう」。時計の針を前に進められないでいる。

 

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