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【社会】

自身と向き合う言葉を 座間事件発覚1年 白石被告へ手紙34通

起訴後に白石被告に送った手紙

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 「拝啓 白石さん」。座間九人切断遺体事件の白石隆浩被告(28)=強盗強制性交殺人などの罪で起訴=に送った手紙は、事件発覚から一年になる三十日までに三十四通になった。対等に向き合うため、あえて呼称は「さん」付けにした。返信が来ないまま、コピーした手紙の束が積み重なっていく。 (木原育子)

 手紙を初めて出したのは起訴された九月十日。「なぜ、九人の命を奪ったのか」と問うた。接見禁止が解けたこの日以降、勾留先の警視庁高尾署(東京都八王子市)を毎日のように訪ね、面会を申し入れるとともに手紙を預けた。

 報道各社が署に集まったが、面会は一日一社。毎朝、申請した社の中から、白石被告が選ぶ方法だった。起訴の翌日、面会したNHKが白石被告の話した内容を報じた。「金を払った相手に話をしたい」。がくぜんとしながら、手紙に託した。「白石さんが今、しなければならないことは、お金を求めること以上に、自身と向き合うことではないか」(同十一日)

 同二十六日、立川拘置所(立川市)に移ると、雑誌メディアが目立ち始めた。雑誌記者が、次々と面会室に呼び込まれていく。

白石隆浩被告=ツイッターから

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 拘置所の待合室に取り残される日々。白石被告の要求通りに現金やお菓子を差し入れたら、遺族はどう思うだろうか。取材倫理に反するのではないか。歯がゆさに、心はかき乱された。

 十月九日、白石被告の誕生日には思わずこう語り掛けてしまった。「人は変われる。ただし、自分と向き合わないと変われない。自分と向き合うには、言葉が必要になる。真実を語ってほしい」

 事件に巻き込まれた九人は、会員制交流サイト(SNS)の「言葉」を通じて白石被告と知り合った。今度は、手紙の「言葉」で白石被告の心の内を引き出せないかと思った。

 多くの被告人や受刑者と面会してきた「創(つくる)」出版(新宿区)の篠田博之編集長は「露骨な金銭の要求は、事件を『お金のため』と供述した被告らしいと言えば被告らしい」とした上で、こう続ける。「裁判員裁判では、(非公開の)公判前整理手続きで協議が進み、公判がセレモニー的になっている。被告への直接取材は、ますます重要になる」

 便せん百枚、三万余字になった手紙を書き続けることはどこか「写経」に似て、記者としてのあり方を自省させられた。今日は何を問うべきか。そう考え続けることが、被害者の無念を少しでも受け止め、事件と向き合う責任のように思えた。答えを待っている。

 

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