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【社会】

<税を追う>護衛艦や潜水艦 兵器予算を補正で穴埋め

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 護衛艦や潜水艦を建造するための防衛省の予算要求を巡り、財務省の査定で本予算(当初予算)に盛り込まれなかった分が、そのまま補正予算に計上されているケースのあることが本紙の調べで分かった。二〇一三年度以降の六件の艦船建造費で、本予算と補正の合計額が防衛省の要求額とぴたり一致した。当初予算の不足分を補正予算で補填(ほてん)している格好だ。補正予算は本来、自然災害や不況対策として組まれるもので、補正の趣旨から外れているとの指摘が出ている。(「税を追う」取材班)

 本予算の減額分と補正予算の金額が一致したのは、護衛艦二隻と潜水艦四隻のローン(後年度負担)払いの建造費。一五年から建造が始まった護衛艦「まや」の場合、防衛省は一七年度予算で百九十三億円を要求。本予算案に盛り込まれたのは百六十二億円で、不足分の三十一億円は一六年度補正予算案に前倒しで計上された。

 二つの予算案は一六年十二月に同時に閣議決定されたが、会計年度が異なるため国会で別々に審議され、補正は一七年一月に、本予算は三月末に成立した。

 まや以外の五隻の一五〜一七年度の要求額は計九百八十九億円。うち本予算に盛り込まれたのは計八百六億円で、残りの百八十三億円はそれぞれ前年度の補正予算に前倒しで計上され、事実上補填されていた。

 本予算と補正の合計額と防衛省の要求額の差が、わずか1%以内に収まるケースも一四〜一八年度に航空機購入費などを含めて計九件あり、各前年度の補正に回した額は計九百三十億円に達した。

 補正予算の理由を防衛省は「装備品を早期に整備するために前倒しした」と説明するが、艦船の建造で完成時期が早まったケースはなかった。受注企業の関係者も「建造工程はぎっちり決まっており、途中から早まる余地は基本的にはない」と話している。

 〇六〜一八年度予算を見ると、艦船建造費などのローン払いを本予算と補正予算に振り分けるようになったのは一四年度から。安倍政権発足後、米国製兵器の輸入拡大に伴い国産を含めた兵器ローン残高が急増したことが背景にある。一九年度は五兆三千億円を超す見通しだ。

 ある防衛省幹部は「防衛費が伸びているといっても後年度負担が重く、活動経費を圧迫している。苦肉の策だが、後年度負担を補正に回せば当初予算に余裕ができる」と証言している。

◆必要に応じ前倒し

<防衛省会計課の話> わが国周辺の安全保障環境を踏まえ、早期に必要となる装備品について、前倒しして計上している。企業に早期に支払うことで製造工程の進捗(しんちょく)を図るためで、当初予算の裁量的経費を捻出するためではない。

◆補正の趣旨外れず

<財務省主計局防衛係の話> 緊急性などに合理的理由があると判断しており、補正予算の趣旨から外れるものではない。補正への後年度負担の前倒し計上は、結果的に当初予算の後年度負担を軽くすることはあるが、それが目的ではない。

◆本予算計上が筋

<小黒一正法政大教授(財政学)の話> 補正予算は本来、災害など年度途中に予期しない事態が起きた場合への対応で編成するものだが、実態は形骸化している。防衛装備品の購入費は原則的に当初予算で手当てするのが筋だ。特に年度が異なる補正と当初予算をセットで編成するようなやり方は、全体が見えにくくなる。国民が防衛費のあり方を正確に把握し、議論する上でも好ましくない。

◆防衛費ありのまま示せ

 防衛省がここ数年、艦船の建造費を本予算と補正予算とに振り分けていた背景には、安倍政権で米国製兵器の導入が急拡大し、ローン(後年度負担)残高が急増していることがある。

 財政法上、補正予算の要件は厳格ではない。年度当初からの事情変化や緊急性という名目があれば、あとは「政府の裁量」(財務省担当者)の枠内となる。

 防衛省は補正への振り分けを「装備品を早期に整備するため」と説明する。だが実際は、毎年増加する兵器ローンの支払いをそのまま本予算に盛り込めば、新たな装備品購入などに使う「自由枠」が縮小する。そこで一部を補正に振り分け、自由枠を確保するのが狙いとみられる。

 だがそれは補正予算の趣旨に照らして疑問がある。防衛費の規模は本予算をベースに議論されるため、国会や審議会は本来よりも少ない額で、妥当性を検証していることになる。補正予算が「第二の財布」と化している実態は見えにくく、本予算を矮小(わいしょう)化する弊害は大きい。まず、そのままの姿を国会や納税者に示すべきだ。 (原昌志)

 

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