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【社会】

来客予測9割的中、AIで働き方改革 伊勢の老舗食堂、全国で販売

タブレット端末に表示した来客予測を基に従業員と話す小田島さん(左)=吉川翔大撮影

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 三重県伊勢市の老舗「ゑびや大食堂」が12月1日から、来客数を人工知能(AI)で予測するシステムを全国の同業者向けに販売する。以前は、そろばんで会計する“機械音痴”な店だったが、6年前に店を継いだIT企業出身の小田島春樹社長(33)が独自にシステムを開発。的中精度は9割を超えており、「人手不足や食品ロス(廃棄)に悩む店の力になりたい」と話している。 (吉川翔大)

 システムの販売にあたりAI部門を担う関連会社EBILAB(エビラボ、伊勢市)を設立。膨大なデータの収集や整理を得意とする会社「インサイトテクノロジー」(東京都渋谷区)と業務提携した。

 店は大正初期から百年余り続く。伊勢神宮内宮前の多くの飲食店が立ち並ぶ「おはらい町」の一角にある。

 雨天の今月二十二日。AIは開店前に二百八十四人の来客があると予測した。実際は予測より一人少ない二百八十三人。「雨なのでもっと少ないかと思ったんですが。人間の勘よりも機械が正しいことも多いんですよ」。精度の高さに小田島さんの声が弾む。

 小田島さんは二〇一二年、妻の実家のこの店を継ぐため東京から伊勢市に移住。当時はそろばんで勘定し、食材の仕入れ数は従業員の勘だった。食べられる状態なのに余って捨てざるを得ない「食品ロス」で利益率は高まらず、従業員の給与も最低賃金に近い水準だった。「働いている人がハッピーになる方法を考えよう」。前職のソフトバンクで新規事業開発などを手掛けた経験を生かし、改革に乗り出した。

来客数を予測するAIを使い、売り上げを伸ばしている「ゑびや大食堂」=三重県伊勢市で(大橋脩人撮影)

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 手書きだった売り上げ記録はパソコン入力に変え、レジも導入。天気や伊勢神宮への参拝客数、近くのホテルの宿泊客数、イベント情報、自社ホームページへのアクセス数などの情報を集めた。こうして蓄積した百五十項目のデータを基に一日の来客数を予測するAIを開発した。

 当初の的中精度は八割。データの使い方や予測数の計算方法を見直し、現在、予測と結果の誤差は一割以内で推移する。

 予測によって食品ロスが七割減っただけでなく、勤務シフトを無駄なく組めるようになった。余裕が生まれた従業員は接客サービスに力を入れ、土産品の開発も手掛けた。時間帯ごとの来客予測もできるため、料理の準備が効率的になり、客の回転率も上がった。昨年の従業員一人あたりの売り上げは一千万円を超え、一二年の三倍に。従業員の給与を上げ、有給休暇制度も充実させた。

 販売価格は初期費用三十万円に加え、月額一万九千八百円。小田島さんは「人手不足で疲弊する飲食店のつらさは分かる。少しでも役に立てば」と話す。問い合わせは、エビラボ=電0596(63)6364=へ。

 

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