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【社会】

<税を追う>F35A国内企業参画中止 産業育成 絵に描いた餅

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 ステルス戦闘機F35A=写真=の生産を巡り、国内の防衛産業の育成という防衛省の狙いは、軌道修正を迫られることになった。千八百億円もの国費を投じながら、国内企業が生産に参画できるのは、ごく一部。巨額の税投入に見合うだけの恩恵は得られていない。防衛省の見通しの甘さに、企業からは「税金の無駄遣いだ」との声も聞こえる。(「税を追う」取材班)

 「やむを得ないと思う。議論はあると思うが、価格差が出ているから」。防衛省幹部はそう漏らした。

 防衛省は年末の二〇一九年度予算案の作成に向け、国内企業が機体の組み立てや一部の部品製造に参画してきた当初の計画を撤回。一二年度から導入を進めてきた四十二機のうち、残りの八機は来年度から米国製の完成品輸入に切り替える。

 この幹部が撤退理由に挙げたように、国内企業が加わると機体価格は完全輸入よりも割高になる。昨年の財政制度等審議会でも、財務省から「国内企業の参画は在り方を見直してはどうか」と注文が付いた。

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 コスト面だけではない。技術習得の恩恵が乏しいことも疑問視されていた。

 三菱重工業が担う組み立ては主翼や胴体を接合する程度で、エンジンやレーダーの部品製造も、一機で何万ともいわれる部品のうち国産はわずか二十九品目。それも米側から原材料が届かないなどの理由で、いまだに搭載されていない。

 すべての国産部品の搭載は「早くても三十五機目以降」と、計画の大幅な遅れを余儀なくされたが、三十五機目以降の八機を輸入に切り替えることになれば、当初描いた構想は絵に描いた餅に終わりそうだ。

 航空自衛隊の元空将は「結果的に痛い出費。技術習得のメリットはなかった」とみる。自民党国防族のある議員は「コストがかかるのに恩恵は少ない。次期戦闘機を国内主体で開発したほうが、防衛産業の育成に寄与する」と話す。

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 ただ、生産を担ってきた企業の心境は複雑だ。関係者は「防衛省は完全輸入に切り替えた方がコストがかからないと、そろばん勘定したのだろう。五百億円もかけてFACO(組立工場)を造ったのに、つぶしてしまうのか」とこぼす。

 機体の整備は国内企業が引き続き担うが、「整備だけするのはリスクが高く、下手に手を入れて整備不良を起こしてはかなわない」と不安を漏らした。

 背景にあるのが、安倍政権で急増する米国政府の対外有償軍事援助(FMS)による高額兵器の輸入だ。国産も含めた兵器ローン(後年度負担)は五兆円を突破し防衛費を圧迫する。

 ある政府関係者は「そのまま輸入する方が予算的には浮く。FMSが増える中で、こういう部分を削らないと立ち行かなくなっている」と話している。

 

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