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【社会】

司法取引第1号 公判始まる タイ贈賄事件

 司法取引制度が初めて適用されたタイの発電所に絡む贈賄事件で、不正競争防止法違反(外国公務員への贈賄)の罪に問われた「三菱日立パワーシステムズ」(MHPS、横浜市)の元執行役員錦田冬彦被告(63)と元部長辻美樹被告(57)は二十五日、東京地裁(任介辰哉裁判長)の初公判で起訴内容を認めた。地裁は、検察側と会社が今年六月二十八日に交わした司法取引の「合意内容書面」を証拠採用した。

 書面には、MHPSが事件に関する八十六点の資料を提出し、捜査や公判に協力する代わりに、法人を起訴しないことが盛り込まれた。担当検事とMHPS社長、弁護人が署名した。

 起訴状によると、二人は元取締役の内田聡被告(64)と共謀し二〇一五年二月十七日ごろ、現地の港に資材を荷揚げする際、タイ運輸省港湾局の支局長から許可条件に違反すると指摘され、黙認してもらうなどの便宜を受けるため、輸送業者を通じて現金千百万バーツ(当時のレートで約三千九百万円)を渡したとしている。

   ◇

 司法取引制度の「一号事件」となったタイの発電所に絡む贈賄事件は、二十五日の初公判で検察側と企業側の合意内容が明らかになった。捜査機関に他人の犯罪情報を提供する見返りに、刑事処分の軽減が得られるこの新制度は、日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者が逮捕された事件でも適用された。

 この日の公判では、検察側と「三菱日立パワーシステムズ」(MHPS)が交わした「合意内容書面」が証拠採用され、検察側が中身を一部朗読した。同書面では、検察側がMHPSに対し、三被告に関するすべての証拠資料の提出や、社員らの捜査・公判への協力を約束させる一方、見返りとして「MHPSを起訴しない」と明記されていた。

 東京地検特捜部は実際、三被告を不正競争防止法違反罪で在宅起訴しながらMHPSは不起訴(起訴猶予)とした。元執行役員の錦田冬彦被告は被告人質問で司法取引の適用をいつ知ったか問われ、「新聞報道で」と答えた。司法取引は当初、社員らの情報提供により、企業トップや企業自体の犯罪を暴くことが期待されていた。MHPSの事件は逆の構図だったため、「企業が助かるために社員を売る『とかげのしっぽ切り』ではないか」との声も上がった。

 甲南大の渡辺修教授(刑事訴訟法)は「現場の犯罪もゴーン容疑者の事件も、企業モラルを問うたという点では同じだ。司法取引は今後さらに増えていくだろう」と指摘。その上で「捜査で最優先すべきはあくまでも客観証拠で、司法取引は最終手段にとどめるべきだ。決して誤った見込み捜査に走ってはいけない」と警告した。 (蜘手美鶴)

 

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