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【社会】

<税を追う>F35大量調達が発端 自動車関税と引き換え

写真は、上から護衛艦「いずも」、いずも改修にあたり自民、公明両党が交わした確認書、戦闘機「F35B」のコラージュ

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 二〇一八年十二月十四日、首相官邸。十一月から八回の会合を開いて次期防衛大綱を議論してきた与党ワーキングチーム(WT)座長の小野寺五典前防衛相から安倍晋三首相に、一通の確認書が手渡された。

 いずも型護衛艦の改修について自民・公明両党は、戦闘機を常時搭載しないことなどから、憲法で保有が認められない攻撃型空母に当たらないと結論づけた。安倍首相は「しっかり守って運用する」と応じた。

 前日、衆院議員会館の会議室。WTの会合後、座長代理の佐藤茂樹・公明党安全保障部会長は記者団の前で胸を張った。「他国に脅威を与えないためにも、甲板上に常に戦闘機が装備されている絵柄はよくない。必要な時に離着陸するという運用は専守防衛を表すのに大事な要素だ」

 呼称も多用途運用母艦は「空母」を連想するとして多用途運用護衛艦で合意した。さらに新中期防では従来通り「多機能の護衛艦」を使った。世論を気にして変更を避けたのだった。

 中谷元・元防衛相は「相手の国に破滅的な打撃を与えるような攻撃型空母は憲法上持ち得ないのが前提。攻撃型でないことを担保するために多用途運用護衛艦に落ち着いた」と話す。

 海上自衛隊の長年の悲願とされてきた空母。だが、防衛省のある幹部は「海上自衛隊にもろ手を挙げて喜んでいるという雰囲気はない」と話す。「南西諸島で作戦を行うためには有用だろうが、いずもは本来、対潜水艦用の艦船。戦闘機の運用で、対潜能力が落ちては全く意味がない。海自内には航空自衛隊がいずもを使うことへの抵抗もある」

 では、なぜ政府は空母化にこだわったのか。別の幹部は、米国製のSTOVL(ストーブル)戦闘機F35Bの導入が始まりだったと証言する。

 政府は昨年十二月、旧型で古くなった九十九機のF15の代わりに今後、F35AとF35Bの計百五機を順次購入すると決めた。総額一兆二千億円。背景には兵器売り込みで対日貿易赤字を減らそうとするトランプ米大統領の圧力がのぞく。

 トランプ氏は昨年五月、自動車の関税引き上げの検討を発表しており、経済産業省の幹部は「あれ以来、『自動車の関税を上げさせない』は安倍政権の至上命題になった」と話す。

 防衛省の幹部は「トランプ氏に手土産を持たせないと、何を言ってくるか分からないと政府は常に考えている。そもそもF15の後継機をどうするかの検討があり、官邸も防衛省も取引的に見せられる道を模索していた。それでF35の百機購入になった」と明かす。

 「百機買うならA型だけでなく、違うタイプの攻撃力もあった方がいいという流れになった。STOVL機のB型は船に載せないと意味がない。それで一度は立ち消えになった空母化の話が出てきた」と話した。

 首相が議長を務め、国防や外交上の重大政策を議論する国家安全保障会議(NSC)。実動部隊の国家安全保障局の幹部は「F35百機を調達する結果として、貿易不均衡の是正と日米安保体制へのアピールという側面はある」と話し、米国への配慮を認めた。

 伊藤俊幸・元海上自衛隊呉地方総監は「自衛隊の現場からでなく政治のトップダウンで決まったという印象だ。尖閣諸島が念頭にあるのだろうが、守れる体勢は整っている。いずもを使って何をするのかという作戦思想が作られないうちに(空母化が)降ってきた感じだ」と疑問を呈した。

 元海将も「必要性を正面から議論せず、机上の空論で決まった」と批判する。通商や外交を巡る官邸の思惑がからんで浮上したいずもの「空母化」。日本が再び軍拡競争の道を突き進む恐れは十分ある。(鷲野史彦、原昌志、中沢誠、望月衣塑子、上野実輝彦、藤川大樹)

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