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【社会】

高校ラグビー「昭和最後 幻の決勝」元監督が指導書 「一瞬一瞬を楽しもう」

初の著書を手に「今年はW杯日本開催の年。ラグビーの楽しさを伝えたい」と話す徳増浩司さん=東京都新宿区で

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 全国高校ラグビー大会の平成最後の決勝が七日に予定されているが、ちょうど三十年前の決勝は昭和天皇逝去のために中止され、両校優勝となった。そのうちの一校である茗渓(めいけい)学園(茨城県)の元監督で、現在はラグビーワールドカップ(W杯)2019組織委員会の事務総長特別補佐を務める徳増浩司さん(66)が初の指導書を出版した。「人生もラグビーも思いも寄らないことが起きる。一瞬一瞬をエンジョイすることだ」と説いている。 (井上靖史)

 徳増さん初の著書は「ラグビー もっとも受けたいコーチングの授業」(ベースボール・マガジン社、百九十六ページ)。「W杯の後、実際にやりたいという子どもが増えた時、自分の特徴や強みを生かすラグビーをしてほしい」と執筆を思い立った。

 徳増さんは国際基督教大で選手としてプレーした後、西日本新聞の記者を経て、二十代の二年間、ラグビーの本場英国のウェールズに留学した。その時に身に付けた練習方法などが指導の土台になった。

 著書では、本場は「おれのおかげで勝てた」という自己主張の強い選手ばかりと紹介。「個々のひらめきや長所を最大限に発揮させ、まとめることこそが本当のチームワーク」と強調する。

 徳増さんの指導者としての集大成が一九八八年度の第六十八回全国高校ラグビー大会だった。茗渓学園は、味方三人をおとりにしながら別の仲間にパスするなど、ひらめきあふれるランニングラグビーで花園を席巻した。

 決勝の相手は、強力フォワードを擁した大工大高(大阪府、現常翔(じょうしょう)学園)。八九年一月七日の決勝当日朝、宿泊していた大阪市内のホテルで昭和天皇逝去の報に触れた。間もなく大会関係者から電話で「決勝戦は中止。両校優勝」の知らせを聞いた。その後に社会を覆う「自粛ムード」のはしりだった。

 徳増さんは「直前まで勝つための準備はしていた。本音を言えばやりたかった」と振り返る。それでも気持ちをすぐに切り替えた。「同点なら抽選で勝ち上がるチームを決めることもある競技。ここまでと決めたら、それ以上争わない。結果を受け入れて次に向かう考え方がラグビーにはある」

 何より表彰式の前、選手たちがスパイクのケースをボール代わりにして遊ぶ姿を見て、楽しむ心は伝えられたと実感し、満足したと著書で回想している。

 今でもファンの間で語り継がれる「昭和最後の幻の決勝戦」から三十年、日本のスポーツ界では指導者のパワハラが問題視されている。著書では、そんな滅私奉公的な風潮にも一石を投じたつもりだ。「面白くなければ集中しないし、集中しなければ身に付かない。個を尊重し、引き出して伸ばす海外の考え方は今の日本スポーツ界の一つの参考材料になる」

全国高校ラグビーの決勝戦が中止されて両校優勝となり、優勝旗を受け取る茗渓学園の選手。右隣は大工大高の選手=1989年1月7日、花園ラグビー場で

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