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【社会】

医療に「やさしい日本語」 外国人「初診」「アレルギー」どう伝える

「『包帯』ってどう説明すればいい?」。グループごとに「やさしい日本語」について話し合う参加者=埼玉県三芳町で

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 日本で暮らす外国人は、4月の改正入管難民法の施行で確実に増える。日本語が不得手な外国人と共生する手段として注目されているのが、日本語を別の日本語に分かりやすく言い換える「やさしい日本語」だ。特に切実なのが医療分野である。病気やけがで急を要するとき、円滑なコミュニケーションが取れるかどうかは命に関わるだけに、外国人支援団体などが普及に力を入れている。 (原尚子)

 「『包帯』の言い換えは」「『座薬は痛みがひどいときに使ってください』はどう伝える?」。昨年十二月上旬、埼玉県三芳町の公民館で開かれた講習会には、地元の医師や看護師、外国にルーツを持つ地域住民など約七十人が集まった。「飲酒」「アレルギー」など、日常的に使っている言葉を「やさしい日本語」に言い換えるクイズの後、日本人が医師役、外国人が患者役になってロールプレイ(役割演技)に挑戦。(1)診断の結果、骨折ではなく捻挫だった(2)湿布と鎮痛薬、座薬を処方する−との想定で、患者に説明が伝わるかを試した。

 包帯を「布」と言われ、首をかしげる外国人女性。「横になってください」も通じなかった。何度も言い直した揚げ句、頭を抱える医師もいた。在留外国人を支援するNPO法人「CINGA」の新居(にい)みどりさん(41)が「座薬は『尻に入れる薬』。『お』をつけると分からない。敬語でない方がいい」とアドバイスすると、「難しい」とため息が漏れた。

 「やさしい日本語」は一九九五年の阪神大震災をきっかけに、外国人への避難誘導などを分かりやすくするために考案され、現在では行政窓口や観光などに浸透してきた。しかし医療現場への周知は遅れ、講習会を企画した順天堂大の武田裕子教授(57)によると、医療関係者で知っているのは5%未満という。

 法務省によると、昨年六月末時点での在留外国人は約二百六十四万人。日本人は、外国人には英語で話さなければと身構えがちだが、85%を占める上位十カ国のうち、英語圏はフィリピン(10・1%)と米国(2・2%)のみだ。武田教授は「実際には英語を使っている在留外国人は約二割。『やさしい日本語』なら六割超が理解できるという調査結果があり、これを共通言語にすればはるかにたくさんの人と意思疎通ができる」と力説する。

 講習会に参加した看護師の平沢明美さん(53)は「最近窓口に外国人の方が来られることが多いので、必要性を感じていた」と語る。ボランティアとして参加したフィリピン出身の久保田プリンセスさん(30)は、病院で書く問診票が難しいと感じてきたが、「やさしい日本語なら分かる外国人もいる。便利で助かる」。

 言葉の壁で病院へ行かずに済ませたり、病院で理解できなくても気後れから「はい」と答えてしまう人も多いという。新居さんは「個別の困りごとに寄り添うために、日本人の私たちが『やさしい日本語』を使って相手の立場に立つことが大切だ」と訴える。

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