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【社会】

<原発のない国へ 再生エネの岐路> (5)送電支配 地域電力阻む

計画したバイオガス発電が進まない野原幸治さん=北海道帯広市で

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 「これで電気をたくさんつくれるのに。まったく、もったいない話です」

 雪原が広がる北海道帯広市で、小山のように積もった牛ふんを前に、牧場主の野原幸治さん(57)がため息をついた。

 地元の牧場は乳製品の輸入自由化を受け、生き残りをかけて規模の拡大を急ぐ。野原さんも五年前に比べ牛を百五十頭に倍増。ふん尿を畑にまくだけでは処理しきれなくなり、仲間とバイオガス発電を計画した。

 ふん尿を発酵させてメタンガスをつくり、それを燃やしてタービンを回す。帯広市を含む十勝地方では三十三基が稼働中。野原さんら十九軒の農家は昨夏、共同で発電所新設を決めた。

 出力は九百キロワット。家庭三百軒分の電力を賄える。ところが、その電気を北海道電力は「受け入れられない」という。太陽光発電などの新設が進み「送電線に空きがない」が理由だった。

 十勝では野原さんらのバイオガス発電所を含め計二十七基の新設計画があるが、すべて宙に浮いている。野原さんたちも今年四月の着工予定だったが、めどが立っていない。

 昨年九月の地震では苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所が損壊し、北海道全域が停電。搾った牛乳を冷やせず、廃棄を強いられた仲間もいた。野原さんはあきらめきれない。「電源を地域の再生可能エネルギーに分散すれば、災害時も停電を防げるのに」

 「空きがない」とされる送電線。京都大の安田陽(よう)特任教授が二〇一六年九月からの一年間を調べると、そうでもなかった。十勝から札幌方面に送る日高幹線に流れた電力量は、許容量の21%にとどまっていた。

 空きが大きいのは全国共通だ。送電線を運用する大手電力各社は、太陽光や風力、火力などが一斉に最大出力で発電しても耐えられるよう、電線の空きを確保している。止まっている原発の再稼働に備えて空けている所も多い。

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 安田教授の調査では、基幹的な送電線の平均利用率は19・4%に低迷。それでも、地域の再生エネが接続拒否されることが相次ぐ。安田教授が例えた。「店はガラガラなのに予約でいっぱいと言われ、外に長い行列ができているおそば屋さんみたい」

 打開策として、都留文科大学の高橋洋教授は、送電網を大手電力から切り離す発送電分離を挙げる。「電線を運用する会社が独立採算なら、ガラガラにしておいてはもうからない。活用策を懸命に考え、設備増強や工夫が加速する」

 北海道で太陽光発電の出力が高まれば、本州の送電網と結んだ「連系線」で、本州に電気を回す。そんな融通で「再生エネを今よりもっと受け入れられる」という。再稼働のめどが立たない原発のために「予約席」を確保する非効率な運用もしなくなるだろう。

 欧州では発送電分離し、送電会社が独立しているため、再生エネも公平に接続できる。日本でも二〇年度から分離が義務付けられるが、発電と送電が同じ持ち株会社に入るなどグループ内にとどまるため、形だけに終わる恐れがある。高橋教授が警鐘を鳴らす。「大手の送電網支配が続く限り、日本の電力は大規模集中型のまま。地域分散型の再生エネの障害になる」 (池尾伸一) =おわり

<発送電分離> 電力会社が一体運用してきた発電と送配電部門を、別会社などに分けること。再生エネ比率が高い北欧やドイツの一部では、送配電会社は発電会社から、資本関係でも独立している。日本では東電が2016年から分離し、他の電力会社も20年度から実施する。だが、同じグループに入り、完全な分離とはいえない状態が続く。

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