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【社会】

<象徴天皇と平成>(1) 代替わりの思い 陛下に重ね

平成最後の新年を迎え、談笑される天皇ご一家=皇居・御所で(宮内庁提供)

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 「象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ…」。天皇陛下は二〇一六年八月八日に公表したビデオメッセージで退位の意向をにじませるとともに、象徴天皇制が続くことを願われた。百二十五代目の天皇として三十年余り在位した陛下の退位は、長きにわたる皇室の継承のあり方を世に問うた。

 「企業の事業承継に相通ずるものがある」と心を寄せるのは、「キンミヤ焼酎」を製造する宮崎本店(三重県四日市市)会長の宮崎由至(よしゆき)さん(71)だ。一七年十一月、社長から会長に退き、新社長に長男の由太(ゆうた)さん(42)が就任した。平成の時代と重なる三十二年間社長を務めた宮崎さんは「最初から七十歳で身を引くつもりだった」と話す。

 中小企業経営者にとって次世代へバトンを渡す事業承継は最後の大仕事。多くの経営者が頭を悩ます。

 宮崎さんは一五年に由太さんと役員に退任の意向を打ち明けた。宮崎さんの父は社長在任中、病に倒れて二年後に死去。当時、専務だった宮崎さんが経営を担う一方、病床の父への業務報告などで多忙を極めた。だから「元気なうちに道を譲ろうと考えた」という。

 退位で実現する皇位継承には「期日がはっきりしているから、皇太子さまは心の準備ができるはず」と共感する。由太さんも「会長の背中を見て学ぶことができ、ありがたかった」。

 宮崎さんは現在、業界団体や財界の活動に専念し、「酒造りは任せている」。由太さんを中心に、会社は今、創業の原点である日本酒に力を入れている。

宮崎本店の宮崎由至会長

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 中小企業から事業承継に関する相談を受ける「辻・本郷税理士法人」(東京)執行理事の楮原(かごはら)達也さん(53)は、失敗例として「前経営者が『院政』を敷くなど経営に介入する場合」と指摘する。逆に後継者に全権を譲る思い切りの良さが成功の鍵という。

 陛下は退位で全ての公務から退く。上皇と天皇の併存による「二重権威」への懸念は、陛下が強く否定しているという。

 ビデオメッセージで陛下は、こうも語った。「日本の皇室が、いかに伝統を現代に生かし、いきいきとして社会に内在し、人々の期待に応えていくかを考えつつ、今日に至っています」

 中小企業家同友会全国協議会(東京)事務局長として実例を数多く見てきた平田美穂さん(59)は、企業経営と皇位継承の共通点を感じたという。「変わらなければ時代に取り残される。その意味では皇室も同じなのかもしれない」

 ◇ 

 天皇、皇后両陛下は皇室の新しい家族像を築き上げられた。両陛下は恋愛結婚し、皇太子さまらもそれに続いた。ストレスで苦しむなど、誰もが経験する問題とも無縁ではなかった。ご一家の歩みを通じて、平成の家族をみつめたい。 (この連載は小松田健一、荘加卓嗣が担当します)

 

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