つなぐ 希望の木
災難を乗り越えてきた木々を、都内に訪ねた。
【社会】四畳半の災禍 新宿アパート7人死傷 都会の孤独死 寂しき遺骨
東京都新宿区大久保で昨年十一月、木造の古いアパートが焼け、生活保護を受けていた高齢男性五人が死亡した火災。遺体は生活保護の葬祭扶助で荼毘(だび)に付されたが、四人の遺骨は引き取る人がなく、山梨県上野原市の寺に安置されていることが分かった。一人は今も身元が確定せず、三人は親類が引き取りを拒んだ。都会で孤独死することの厳しい現実が突き刺さる。 (大野孝志) 「故不詳男性 新宿区11−02018」。火災後に重体が続き、十二月四日に死亡した男性の遺骨の箱には名前がなく、番号が付いていた。新宿区などによると、元路上生活者だった男性の身元は今も確認できず、親類らの連絡先も分かっていない。他の四人のうち一人は引き取られたが、三人は区の担当者が親類に連絡しても、引き取りを拒否された。 担当者が肩を落とす。「かかわりたくないのでしょう」 彼らはそれぞれの事情から、自分で生活を支えられなかった。支える人もおらず、生活保護に頼るしかなかった。安い家賃でも住める四畳半一間、築四十八年の木造アパートで、互いに身の上を明かすこともなく暮らし、都会の真ん中で孤立していた。 五人の遺体は、新宿署からの依頼で葬祭業者が火葬した。費用は一人二十万円の生活保護の葬祭扶助が充てられた。引き取る人のいない四人の遺骨は十二月中旬、業者と契約している上野原市の真福寺に、一人一万円で安置された。納骨に立ち会ったのは、お経を上げる住職と業者の担当者の二人だけだった。 ◆受け入れ急増 年100体近くに四人の遺骨は、観音像の足元の納骨堂で身を寄せるように眠っていた。 現場のアパートから直線距離で約五十五キロ離れた寺まで車で二時間。中央道を経て、雪が残るつづら折りの道を縫う。四人の遺骨は同様に引き取り手がない他の数人の遺骨とともに、葬祭業者のワゴン車でやってきた。 遠くの寺に眠る理由を、田中禅价(ぜんかい)住職(61)が語る。「永代供養は通常何十万円もかかる。生活保護を受けていた貧しい人の遺骨を、都会の霊園の経営者が引き受けるでしょうか」 田中住職は一九九八年、人間関係が冷たく希薄になったと感じ、無縁仏が増えるだろうと、合葬するための高さ六メートルの観音像と納骨堂を建てた。二〇〇六年ごろまでは年間数体だったが、ここ一、二年は年間百体近くに急増。首都圏で孤独死した人らを中心に、これまで二百四十以上の遺骨を納めてきた。 遺骨は一年間、納骨堂で引き取る人を待つ。誰も来なければ、観音像の下で散骨して合葬する。新潟や名古屋の親類が来た例がある以外、ほとんどは引き取られないままだ。 「東京の人は引き取りに来ない。お参りに来る人もいない」と田中住職。「苦労して生きて、亡くなった後も身内の墓に入れない彼らは叫んでいる。人のつながりの薄い今の社会がどうなるべきかを、教えてくれているのでしょう」 PR情報
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