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【300文字小説】

金魚すくい 嶋田めぐみ

イラスト・瀬崎修

写真

 子供たちが金魚すくいをしたいと言うので、屋台を探した。

 水の中を覗(のぞ)き込むと、色取り取りの金魚と地味なメダカが一緒になって泳いでいた。

 子供たちは薄い紙が貼られたポイを受け取り、嬉(うれ)しそうに、水をぐるぐるかき混ぜている。それじゃあすぐ破けてしまうだろうと思ったが、楽しそうに魚を追いかける子供の笑顔を見ると、まぁいいかという気分になり、黙って眺めた。やはり何もすくえなかったが、子供たちは満足げだ。

 すくえなくてももらえる金魚四匹とメダカ四匹の入ったビニール袋を手に下げ、水槽と餌の事を考えると、もはや祭り気分は終わっていた。

 これ、私が世話するんだろうなあ…。

 (静岡県富士市・自営業・43歳)

◇ ◇ ◇ ◇

メダカの学校 川村育久

 最近、我が家にメダカの学校ができました。

 知り合いから分けてもらったメダカをガラスの容器で飼っているのです。

 クラスは三組。

 体長一センチの年長さんが三匹。五ミリの年中さんは四匹。卵からかえって間がない二ミリほどの年少さんが八匹。

 それぞれクラス分けされています。

 メダカの学校は厳しくて、以前は、年長、年中、年少混在のクラス分けでしたが、年少さんが年長さんに食べられる事件が起き、数が減ったので、新たなクラス分けにしたのです。

 年少さんは、まだ小さくて、老眼の先生はメガネを外さないと見えないほどです。

 けれど、学校生活に慣れて成長したら、年中クラスになれるでしょう。

 それを楽しみに、細かい粉末の餌をやっています。

 (大津市・嘱託職員・68歳)

◇ ◇ ◇ ◇

感染 平川彰大

 朝の通勤電車で、隣に座った学生が手元で何やらクルクルと回していた。車内を見回すと、似たような物を回している乗客がちらほらいた。

 会社に着くと、部下の女性社員が例の物を指の上で回転させていた。

 「何だい、それ」

 「知りません? 流行(はや)ってるんですよ」

 私はただ首を振った。

 オフィスを見渡すと、若い社員たちの多くがデスクワークをしながら、それを回していた。

 何が楽しいのかと尋ねてみても、みんな「流行ってますから」としか返さない。

 退社後、私は駅前でそれを見つけて買うと、慣れない手つきで回しながら帰った。

 家に着くと、妻がそれを見て言った。

 「何なの、それ?」

 「知らない? 流行ってるんだよ」

 (神戸市垂水区・会社員・38歳)

◇ ◇ ◇ ◇

 夏真っ盛り。お祭りの楽しみといえば、嶋田めぐみさんの「金魚すくい」。子供たちは、ぞんぶんに水遊び気分を味わったようですが、お母さんの気がかりは、その後のお世話。

 こちらも夏の水槽を覗(のぞ)き込んで、川村育久さん「メダカの学校」。お世話係の先生は、生徒みんなの元気な成長を願って、いろいろ気づかい。クラス分けは、いいアイデアですね。

 アメリカ発で急激に流行した手のひらサイズの回転玩具を巡って、平川彰大さんの「感染」。日本では“ハンドスピナー”のネーミングが一般的。知らない? でもはやってますよ。

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