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【300文字小説】

癒しと若返り 松本友子

イラスト・瀬崎修

写真

 二年ぶりに小猫を飼うことになった。

 手のひらにのる小さな生き物に家中が振り回される毎日が始まり、会話が増え、明るくなった。

 ある日、遊びに来た二歳の孫娘が、不思議そうな顔で聞いてきた。

 「バーバは、小猫ちゃんのお母さんなの?」

 するどい観察であった。

 いつの間にか“バーバ”は“お母さん”に、“ジージ”は“トータン”に、“おばちゃん”は“お姉ちゃん”に。

 以前、二匹の猫を飼っていた時と同じ呼び方だ。三人とも、自称を一世代若返らせていた。

 世の中猫ブームで、癒(いや)し効果がとりざたされているけれど、若返り効果もあったとは。

 (神奈川県横須賀市・主婦・67歳)

◇ ◇ ◇ ◇

招き猫 吉岡雪子

 私は招き猫である。

 猫に関わることわざをいろいろ耳にするが、人間は大きな誤解をしていて現実とは違うものが多い。特に『猫に小判』と『猫の手も借りたい』は残念に思う。

 小判を大切に抱えている私たちは当然お金の価値を知っているし、お客とお金を招いている手はちゃんと人間の役に立っている。

 しかし、不満を言っても現実は変わらない。私たちはイメージアップを目指し、毎日、店先でがんばっているのだ。

 しばらくすると、親子連れが来店。女の子は店内をキョロキョロ見回して、何かおもしろい物を探している様子だ。

 私は、ピシッと気合を入れてポーズをとる。

 私を見つけた女の子、私を指さし一言。

 「お母さん、あの猫、猫パンチしてるよ」

 (津市・学童指導員・53歳)

◇ ◇ ◇ ◇

犬型スーパーロボット 山門千絵

 泥棒は、その家の玄関から、こっそり中に入った。そこに、一匹の犬型ロボットがいた。

 「おかえりなさいませ、ご主人さま」

 しめしめ! こいつはオレのことをこの家の主人と勘違いしているな。

 泥棒はニヤリとした。

 「そうそう、通帳と印鑑はどこにあったっけ」

 「ベッドの下の茶色い缶の中です」

 犬型ロボットはまんまと教えてくれた。

 金目のもののありかは聞けばすべて答えてくれるので、泥棒は楽な仕事だと笑った。

 「そうだ、暗証番号も聞いておこう」

 「110です、ご主人さま」

 すると突然、玄関から警察官が入ってきて泥棒を捕まえた。

 「通報ありがとう。さすがスーパーロボットだ。時間稼ぎをしながら、警察に通報までするとはね」

 (愛知県日進市・会社員・38歳)

◇ ◇ ◇ ◇

 可愛(かわい)い小猫ちゃんが家族の一員に加わって、松本友子さんの「癒しと若返り」。生活のすべてが新しい主役とともに回り始めて、笑顔が増えただけでなく、気持ちまでリフレッシュ。

 同じ猫でも、こちらは商売繁盛に一役買う、吉岡雪子さんの「招き猫」。なるほど、無邪気なお客さんには、この姿が、かっこうの遊び相手に見えるのかもしれませんね。

 猫の話題が続いたので、お次は、山門千絵さんの「犬型スーパーロボット」。今後ますます普及すると思われる家庭内ロボット。怪しい侵入者も、まとめてお掃除してしまいます。

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