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【300文字小説】

じゃんけん 古谷柚凪

イラスト・瀬崎修

写真

 グー、チョキ、パー。選択肢はこの三つ。どれを出すかによって、僕の人生は変化する。

 ふだん僕はグーを出す。男らしくってカッコいいからだ。

 だが、みんなは僕の手を知っている。それを見越してパーを出すだろう。

 僕はさらにその上を行く。チョキだ。だがもちろん、それを想定する頭のいいやつもいる。

 結局、無限ループじゃないか。

 だったら、僕は男だ。

 「最初はグー、じゃんけんぽん!」

 視界に入る、たくさんのパー。負けた…。

 僕が給食のプリンをゲットできるのは、まだまだ遠い未来になりそうだ。

 (愛知県豊川市・学生・12歳)

◇ ◇ ◇ ◇

A定食 or B定食 脇田守

 正午すぎの社員食堂は混んでいる。ショーケースのメニューを横目で見ながら列に並ぶ。

 <Aハンバーグ定食><Bアジフライ定食>…目玉焼きがのったハンバーグは旨(うま)そうである。しかし、今は動物性脂肪を控えるようにしている。

 (アジにするか…)

 その時、後ろから女子社員の会話が聞こえた。

 「私はハンバーグ。あなたは?」

 「そうねえ、アジにしようかな」

 「フライものは衣が結構高カロリーよ。たくさん一度に揚げるから油もねぇ…」

 余計な情報が入ってくる。自分の番がきた。

 「どちらにしますか?」

 「あのう、きつねうどん下さい」

 「麺はあちらの列に並んで下さい」

 「ハイ…」

 魅力的な料理は、時に残酷である。

 (名古屋市守山区・会社員・57歳)

◇ ◇ ◇ ◇

赤ちゃんマジックショー 三上正

 私はアマチュアマジシャン。赤ちゃんのためのマジックショーをする。

 赤ちゃんにマジックがわかるかって? それがわかるんだ。

 赤ちゃんは、赤色と音と物の出現が大好き。今日もたくさんの赤ちゃんがお母さんに抱かれて、顔だけ出して見ている。

 私は音楽に合わせて、赤いハンカチを振る。ハンカチは一瞬にして赤いバラになる。ビリビリと破った新聞が、一瞬にして元通りになる。

 お母さんが笑う。笑いは伝染する。

 赤ちゃんも笑う。

 マジックを終え、みんなよく見てくれたね、ありがとうと感謝を込めて手を振ると、赤ちゃんたち、みんな一斉に、袖からかわいいモミジやバラのつぼみを出現させた。

 それは赤ちゃんのマジックショーだった。

 (愛知県岡崎市・無職・69歳)

◇ ◇ ◇ ◇

 三すくみの構成で勝敗を決する、古谷柚凪さんの「じゃんけん」。単純な三択にもかかわらず、迷いだしたら無限に複雑。自分を信じて、えいやッ!と繰り出した拳でしたが…。

 こちらも待ったなしの決断を迫られて、脇田守さん「A定食or B定食」。二択を回避して無難な第三の道を選んだつもりでしたが、そこに待ち構えていたのは、無情な落とし穴。

 大人相手とは一味違った演出が求められるはずです、三上正さんの「赤ちゃんマジックショー」。演技を終えて見渡せば、観客席から返ってきたのは、手品のように可愛(かわい)い反応。

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