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【300文字小説】

グローブと私 大西一郎

イラスト・瀬崎修

写真

 グローブを買った。五十余年ぶりだ。

 懐かしい。手にはめた感触がいい。二度、三度、ボールを上に投げ、受ける。

 小学校から高校まで野球と親しんだ日々、今は昔のことだ。

 昨今、サッカーなどの人気が高まり、広場などでも野球を見ることは少ない。しかし、TVで見ると多くのファンが入り、ユニフォーム姿で応援している人もいて、それなりに人気はある。

 ある日思い立って公園に行った。ホームベースの方向に投げる。

 ストン! ボールは遙(はる)か手前に落ちた。天を仰ぐ。子どもが笑いながらボールを投げ返してくれた。

 「ポン」と音がして、グローブに入った。

 (名古屋市名東区・無職・83歳)

◇ ◇ ◇ ◇

辞典を旅する 岸田玲奈

 漢字辞典を買った。読み物としても面白いと紹介されたのだ。

 「陰」は光が当たらないところ、「影」は光によって見えるようになるもの。

 はぁ〜、なるほど。違うものねえ。

 部首は…コザトヘン。「コザトヘン」の元は「阜」、ふむ、意味は丘。あ、だから光の当たらないカゲが出来(でき)るのね。

 じゃあ「オオザト」は? ほう、「邑」か。ああ、都とか郡に使われてるわね。

 「右」と「左」は象形文字。右手の平には酒器、左手の平には道具とな。左よりも右の方が優れている、だって。

 あ、だから「右に出る者はいない」とか「左遷」って使われるのね。うう〜ん、奥が深いわあ。

 一つを調べると、あれもこれも気になってしまう。終わりのない旅が始まった。

 (大阪府高石市・会社員・24歳)

◇ ◇ ◇ ◇

ヒーロー戦隊 塩野谷尚子

 昔からヒーロー戦隊シリーズが好きだった。

 我が家をヒーローたちのカラーに当てはめてみることにした。

 いつもみんなの頼れるリーダー、ヒーローレッドはお父さん。

 いつもクールに物事を解決するヒーローブルーは長男だな。

 そして、みんなのムードメーカー的存在、ヒーローイエローは次男。

 いつも笑顔で少しおっちょこちょいのヒーローピンクは末っ子の長女。

 おっと、私は何色のヒーローだろうか?

 いつもみんなのまとめ役、いろんな色に染まりながら調和を取るヒーローホワイトかな。

 それとも、誰にも染まらず裏の司令塔的存在ヒールブラックかも。

 ともあれ、今日も我が家の平和は保たれている。

 (愛知県豊橋市・自営業・50歳)

◇ ◇ ◇ ◇

 手に馴染(なじ)んだ少年時代の感触を思い返して、大西一郎さんの「グローブと私」。久しぶりの投球は、さすがに剛速球とはいきませんでしたが、少年の素早い返球を見事にキャッチ。

 漢字の数はいくつ? ゴマンとあるから五万…と教わった覚えがあります、岸田玲奈さんの「辞典を旅する」。多種多彩な漢字の成り立ちや由来を調べ始めると、楽しさは尽きません。

 スマートな色分けスーツに身を包んで活躍を続ける、塩野谷尚子さんの「ヒーロー戦隊」。力を合わせ、それぞれの得意技を繰り出して平和を守る姿は、まさに仲良し家族。

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