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【政治】

虐待の聴取 一度きりに 子どもの負担軽減へ新制度

面接室を別室のモニターで観察する山田不二子さん=神奈川県伊勢原市で(平野皓士朗撮影)

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 虐待を受けた子どもは二回、心の重荷を背負う。一回目は虐待そのものによる体や心の傷。二回目は大人から繰り返し事情を聴かれ、つらい経験を思い出してしまうことだ。せめて二回目の負担を和らげようと、これまで児童相談所(児相)、警察、検察が個別に面接していたのを、三機関の代表者が行う「協同面接」制度が始まろうとしている。神奈川県の医師の熱意が「縦割り行政」の壁を壊し、一歩を踏み出した。 (安藤美由紀)

 神奈川県伊勢原市に今年二月開設した「子どもの権利擁護センターかながわ」。同市のNPO法人・チャイルドファーストジャパン(CFJ)が運営し、専門的訓練を受けたスタッフが虐待を受けた子どもから聞き取りをしている。協同面接はまだ実施されていないが、設備は整っている。

 面接室は子どもと面接者が二人きりで話すため、一人掛けのソファを向かい合わせに設置。天井にカメラが据えられ、別室のモニターで視聴できる。別室からは内線電話で面接者に「これを質問して」と伝えられ、録音・録画もできる。

 聞き取り後、子どもは隣の診察室へ。立件に必要な証拠を得ることも重要だが、診察所見が正常であれば「あなたの体は傷ついていない」と安心させてあげることができる。

 CFJ理事長で内科医の山田不二子さんは「子どもの虐待への対応は欧米に比べ大幅に遅れている。協同面接の実績を積み重ねたい」と話す。

 従来、子どもが性虐待などの虐待を受けた場合、児童保護を目的とする児相、犯人検挙を目指す警察、有罪の根拠を固めたい検察が個別に聴取。子どもはそのたびに恐怖がよみがえる弊害が指摘されていた。

 山田さんは一九九〇年に同市内で開業し、九八年に民間の子ども虐待防止団体を設立。特別な技術や知識が必要と痛感し、調べたら、欧米では訓練を受けた職員が代表して聴く制度が定着していると知った。

 国内導入を目指し、米国から講師を呼んで専門的な訓練を受け、二〇一〇年から児相職員や警察官らに研修を実施してきた。子どもの虐待を考えるシンポジウムも開催し、来年で十八回目を迎えるが、捜査機関も参加するようになった。地元の児相や警察、検察にも働き掛けた。

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 賛同する国会議員も関係省庁に要請。児相を所管する厚生労働省、警察庁、最高検察庁は今年十月、全国の出先機関に協同面接を促す通知を出した。

 重徳和彦衆院議員(改革結集)は「与野党が一致して行政に働き掛けた」と話す。

 課題もある。通知は努力目標にとどまり、三機関のうちどこかが拒めば実施されない。録音・録画も義務ではない。

 三機関の運用に委ねられている部分が大きいが、山田さんの熱意でここまでたどり着いた。これから三機関の理解が深まれば、子どもに寄り添った面接が行われるようになる。

 <児童虐待の認知数> 全国の児童相談所が2014年度に対応した件数は8万8931件で、前年度比20・5%増。24年連続で過去最多を更新した。警察庁が発表した14年の検挙件数も698件と、前年比49・5%増だった。

 

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