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【政治】

別のノーベル賞学者も「消費増税」延期論 「経済不安が世界にまん延」

国際金融経済分析会合の第3回会合であいさつする安倍首相(左)。右はポール・クルーグマン名誉教授=22日、首相官邸で

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 政府は二十二日、世界経済について有識者と意見交換する国際金融経済分析会合の第三回会合を首相官邸で開いた。講師を務めたノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン米プリンストン大名誉教授は「まだ日本はデフレという環境から脱却するロケットのスピードになっていない。消費税率のアップは今やるべきではない」と、来年四月の消費税率10%への引き上げに反対を唱えた。(関口克己)

 クルーグマン氏が会合後、記者団に説明した。現在の経済状況については「世界経済は弱さがまん延している。日本だけでなく、他の国もそうであることが日本の状況をより難しくしている」と述べた。安倍晋三首相は二〇一四年十一月に増税延期を決めた直前、クルーグマン氏と官邸で面談し「(首相の経済政策)アベノミクスを支持する。しかし、消費税引き上げは慎重にいくべきだ」と、当時予定していた一五年十月の税率10%への引き上げ反対を提言されている。

 分析会合では、十六日の初会合で同じくノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授が増税延期を提言。十七日の第二回会合では、デール・ジョルゲンソン米ハーバード大教授が増税の必要性を主張し、元日銀副総裁で日本経済研究センターの岩田一政理事長は消費税に言及しなかった。

◆アベノミクスに苦言次々「法人減税は疑問」「金融政策に偏り」

 政府の国際金融経済分析会合に参加した国内外の有識者は、いずれもアベノミクスの方向性を評価する立場だ。しかし、会合での各人の意見や提出資料を見ていくと、政府にとって「耳の痛い」意見も多い。

 「良い政策だったと思うが、効果というものは限られる。万能薬ではない」。二十二日の会合で講師役のポール・クルーグマン名誉教授は、日銀が導入したマイナス金利政策についてこう述べ、アベノミクスが金融政策に偏りすぎている点に懸念を示した。

 十六日の会合に出席した米コロンビア大のジョセフ・スティグリッツ教授は「法人税減税は投資を促さない」と述べ、安倍政権が進める法人税の実効税率引き下げの効果を疑問視した。

 政府は企業活動を活発にする名目で法人税減税に力を入れるが、企業は投資を控え内部留保を増やしている。二〇一四年度の企業の内部留保は三百五十四兆円と、安倍政権発足後から五十兆円近く積み上がったが、設備投資は五兆円増にとどまる。

 また、アベノミクスの恩恵が一部の富裕層に集中していることに関連し、格差拡大は「経済成長にマイナス」と指摘。格差を是正する取り組みとして、炭素税や相続税、譲渡益課税の増税などの必要性を説いた。

 十八日の講師役のデール・ジョルゲンソン米ハーバード大教授は、日本の雇用制度について「女性が結婚や出産を先延ばしする動機になっている」と主張し、働き方の改革が必要だと訴えた。元日銀副総裁の岩田一政氏は、出生率を高めるため、「子育て費用には八兆円が必要だが、どう財源をねん出するのかが課題」と述べた。 (岸本拓也)

◆富裕層への増税主張 インフレ目標を提唱

 ポール・クルーグマン氏は、米ニューヨーク・タイムズ紙に政治・経済のコラムを執筆する人気の論客だ。

 ブッシュ政権時代には政権を「無能の集まり」と評し、金融危機への対応や社会保障の切り捨てによる格差拡大などについて批判を繰り返していた。「先進国では富裕層への税率はかつてより低く抑えられている」として、必要な行政サービスを賄うために富裕層への増税も主張している。

 日本経済については、デフレ期の日銀の政策判断を批判し、インフレ目標を掲げた金融緩和策の導入を唱えていた。アベノミクスについては当初から支持を表明してきたが、昨年秋には「政策は不十分だった」との内容のコラムを発表して「心変わりしたのか」などと話題になった。一方で消費税増税には一貫して反対してきた。

 国際貿易と経済地理学を一体化させた独創的な研究で二〇〇八年にノーベル経済学賞を受賞した。 (白山泉)

 

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