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【政治】

「障害者差別解消法」施行 積極的な歩み寄り促す

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 障害者差別解消法が一日に施行された。障害者が健常者と同じように暮らせる社会を実現するため、不当な差別を禁止し、民間事業者を含めて必要な配慮をするよう義務づけていて、障害者政策を大転換する内容。政府の対応の遅れなどで、法律への理解は進んでいない。(城島建治)

 法律は国の機関、地方自治体、民間事業者に対し、不当な差別的対応を禁止した上で、合理的な配慮(その場で可能な配慮)を義務づけた。合理的な配慮とは、例えば障害のある人が列車を乗り降りする場合や、駅構内を移動する場合に鉄道会社の職員が手伝うこと。障害者が生活する中で必要な手助けをすることを意味する。

 行政機関は法的義務、民間は一律に対応できないとして努力義務にした。民間事業者が政府から報告を求められても従わなかったり、虚偽の報告をした場合、罰則が科される。

 法律は関係する十五省庁がそれぞれ、民間事業者向けに対応指針をつくるよう義務づけた。各省庁が事業者への通知を出し終えたのは一月中旬で、民間事業者が職員に徹底する時間が短すぎ、十分な対応ができないとの指摘もある。

 法律を所管する内閣府は「周知不足を指摘する声が内閣府にも寄せられている。理解が進むよう各省庁、地方自治体と協力していきたい」と話す。障害者は国内に約七百八十八万人。

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 障害者が暮らしやすい社会の実現に向け、行政や民間事業者はどこまで配慮をすればよいのだろうか。障害者差別解消法の施行直前の三月下旬、車いすを利用する女性と全盲の男性と一緒に東京の街を歩きながら考えた。 (皆川剛)

 「三十分待ちです」。平日昼前のJR新宿駅西口改札。板橋区の職場に電動車いすで向かう小島直子さん(47)に、駅員が告げた。誘導担当者が別の障害者の対応で忙しく、小島さんは改札横で時間をつぶす。

 エレベーターを経由し、ようやくホームにたどり着くと「(降車する)池袋駅に連絡するので待ってください」。山手線を一本見送るのがもどかしい。乗り換えた東武東上線でも待つ時間が長く、健常者なら徒歩と電車で三十分ほどで着く職場に到着したのは一時間二十分後だった。

 「障害を遅刻の言い訳にしたくないから、ネットで調べた所要時間の一時間前には家を出る」と小島さん。「人生に与えられた時間は同じはずなのに、この社会には時間のバリアーがあると感じます」

 一方、帰宅時に利用した都営地下鉄三田線は大半の駅のホームを改修し、一部乗降口にスロープを備える。乗り降りも小島さんが独力ででき、移動時間は通常と同程度だった。

 障害者の権利を守る法律が既にある中で、新法の意義は、民間の積極的な歩み寄りを促した点にある。鍵は条文の「合理的な配慮」という言葉。障害者の要望に、過度な負担にならない範囲で応じることだ。

 小島さんのケースについて、JR東日本は「お客さまの安全を確保するため、全ての駅で駅員がご案内する」と説明するが、高橋儀平・東洋大教授は「人員配置や駅の構造を見直す検討なしに、『安全』だけを強調するのは新法の趣旨にそぐわない。事業者間で情報共有を進め、解を探ってほしい」と提言する。

 別の日、全盲の川村和利さん(46)が訪れたのは、自宅近くの牛丼店「松屋東中野店」(中野区)。自動券売機で食券を買うのは難しいが、持っていた白杖(はくじょう)に、店員の陳淑珍(ちんしゅくちん)さん(26)が気付いた。手渡しで現金をやりとりし、サラダにドレッシングをかける手助けも。川村さんは「二十六年暮らす街なので、こういう店を選んで入ります」と明かした。

 「障害者の経済学」の著者の中島隆信・慶応大教授は、障害者を特別視しない社会がゴールだと指摘。「超高齢化社会で親の介護をする人も増える。みな何らかの困難を抱えていることを前提に社会をつくる時代になる。新法は、意識転換の好機だ」と話した。

 

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