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【政治】

保育所つくれない 住民反対で断念相次ぐ

 認可保育所の新規開設を巡り、近隣住民が「子どもの声がうるさい」などの理由で反対し、断念や延期に追い込まれるケースが相次いでいる。共同通信が待機児童の多い首都圏などの九都府県に聞き取りをしたところ、昨年四月以降、少なくとも十件に上ることが判明。自治体や事業者の説明不足を指摘する声も出ている。

 「保育園落ちた」ブログを契機に、政府が待機児童解消に向けた対策を急ぐ中、地域住民と折り合いがつかずに、受け皿整備が難航している実態が浮かび上がった。

 昨年四月時点で待機児童が五百人以上だった東京や大阪、福岡など九都府県(政令市、中核市を除く)の担当者に電話で聞き取り、回答のあった分をまとめた。開設断念は千葉二、東京一、神奈川一、沖縄一の計五件(定員は約四百四十人分)。延期は神奈川四、沖縄一の計五件(定員は約四百二十人分)で、開設が二カ月から半年以上遅れていた。東京二十三区でも同様のケースがあるが、都の集計には反映されていない。

 このうち神奈川県茅ケ崎市では、ゼロ〜三歳児向けの保育所(定員五十人)の新設を断念。最寄り駅から遠く、送迎に車を使う保護者が多くなることが予想され、近隣住民が「事故が増える」と反対した。説明会を重ねたが理解を得られず、事業者が撤退を決めた。

 沖縄県では二〇一五年度中に予定していた保育所の着工を、「子どもの声がうるさい」「道幅が狭く送迎車で渋滞が起きる」との住民の反発で断念した。別の候補地を探し、来年四月の開設を目指している。

 このほか「住民への説明が遅い」「説明会がないまま開園計画が持ち上がった」と不満をぶつけるケースもあった。

 今回の調査は、千葉県市川市の保育所が今年四月の開設を断念したことを受けて実施。東京二十三区を含んでいないため、件数はさらに膨らむとみられる。

◆用地不足 公園・駐車場も転用

 待機児童が多い都市部では保育所に適した物件の不足に近隣住民の反対運動が拍車をかけ、整備計画に影響が出ている。東京二十三区は今回の調査対象ではないが、待機児童が集中しており、公園内や庁舎の敷地を活用するなど、あの手この手で受け皿の確保に懸命だ。

 昨年四月の待機児童が二百九十四人いた東京都目黒区は今年四月に四百十五人分の定員を増やす計画を立てたが、実現できたのは二百十六人分のみ。区の担当者は「“玉不足”の状態だ」と話し、物件の乏しさを嘆く。「待機解消にはあらゆる方法が必要」として目黒区は来年、総合庁舎の駐車場を三階建ての定員六十人程度の保育所に転用する。

 昨年四月の待機児童数が千百八十二人と全国最多だった世田谷区でも、騒音を懸念する住民の反対などでこの春の開設を延期する施設が出た。

 そこで活用したのは国家戦略特区制度。都市公園法で保育所設置が認められない都立公園内での整備が可能となり、祖師谷公園では来年四月、原則三〜五歳を八十人預かる施設を開設予定だ。近くの住宅街には、地域住民に配慮して、発生する音が比較的小さいゼロ〜二歳用の施設を整備し、連携させる。

 政府は今月、自治体に通知した待機児童の緊急対策に、地域住民との合意形成を促すコーディネーターの積極的配置など、保育所整備を円滑に進めるためのメニューを盛りこんだ。

<待機児童> 認可保育施設などに入れる条件を満たしているのに、定員超過などで入所できない乳幼児のこと。昨年4月時点で2万3000人を上回り、5年ぶりに増加した。この他、親が育児休業中などの理由で自治体が待機児童数に数えていない潜在的な待機児童が少なくとも約6万人いる。用地不足などで施設整備が追い付かず、保育士の確保も課題となっている。政府は今年3月、保育所の「一時預かり」の定期利用などを盛り込んだ緊急対策を公表した。

 

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