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【政治】

英語力で揺れる英語教師 「英検準1級程度」割合が目標下回る

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 全国の公立中学・高校の英語教師のうち、各種の英語試験で「英検準一級程度以上」の成績を収めた教師は高校で六割、中学で三割程度にとどまり、文部科学省の目標を大幅に下回っている。同省は各都道府県教育委員会に改善を求めているが、教育現場では教師の評価が英語試験の成績に左右されかねないとの懸念も出ている。 (清水俊介)

 政府は二〇一三年に閣議決定した基本計画で、「英語教員に求められる英語力」の水準として英検準一級程度以上などと設定。全国の公立高校で英語教師の75%、公立中学では50%が、水準に達することを目標とした。日本英語検定協会などによると、英検準一級は大学中級程度の英語力。英語圏の人と緊張せずに流ちょうにやりとりできるレベルを指す。

 毎年の実態調査で目標は未達成。直近の一五年十二月調査では水準に達した割合は高校で57・3%、中学は30・2%にとどまった。

 都道府県間の差も大きい。高校の場合、トップの福井が86・6%だったのに対し、最下位の千葉は39・2%。中学ではトップの福井の51・7%に対し、最下位の岩手は14・6%。

 文科省は、生徒の成績についても「高校三年は英検準二級程度、中学三年は英検三級程度」との水準を設け、50%の生徒が満たすことを目標にしているが、一五年の調査では中高とも十数ポイントずつ下回った。

 こうした結果を受けて、文科省は「効果的な対応策」が必要と指摘。各都道府県教委に「英語教育改善プラン」の策定を求め、省のホームページで公開している。有効なプランをほかの教委も取り入れることができるようにするためだ。同省国際教育課の担当者は「教師には英語力と指導力をつけてもらい、生徒の英語力強化につなげたい」と話す。

 埼玉大の及川賢准教授(英語教育学)は「生徒の英語力向上にとって、教師の英語力は重要な要素。(英検準一級程度以上との水準は)高すぎもなく低すぎもなく適切」と指摘。一方で「試験では測れない教師の能力もある。判断基準が単一化し、『英検準一級を持っていない教師はダメ』とならないか心配だ」と話す。

◆現場は「指導力が重要」 高校最下位の千葉、生徒は2位

 現場の教師や教育関係者からは「生徒の英語力向上に向けて、教師の英語試験の成績を上げる」という目標そのものに、戸惑いの声が上がる。

 千葉県の公立中学校で英語を教える四十代の男性教師(英検準一級取得、TOEIC930点)は「教師が高い英語力を身に付けるのは望ましい」と理解は示しつつ「生徒の英語力との相関関係はあいまい。一方的な見方だ。子どもに寄り添って丁寧に指導するヒューマンスキルの方が重要」と話す。

 実際、調査結果をみると教師の英語力と生徒の成績は必ずしも結びついていない。例えば、高校では千葉の教師の成績は全国で最下位。しかし、生徒の成績は全国二位(45・5%)だ。

 全国の英語教師らでつくる新英語教育研究会の顧問で、元英語教師の阿原成光さん(79)も「英語教育を分かっていない人たちによる、上から目線の見方だ」と批判する。

 「言葉とは人間同士の心のやりとり。子ども自身が心を開き、声を出し合うことができなければ(英語も)話せるようにならない」と、教師と生徒の信頼を築く教育環境の整備を優先するよう主張。「生徒の英語力を高めるというなら、クラスの人数が多い問題などに目を向けるべきだ」と話す。 (小林由比)

 

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