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【政治】

「生前退位」有識者会議発言要旨

 14日に開かれた天皇陛下の生前退位を巡る有識者会議で、意見を述べた専門家6氏の発言要旨は次の通り。

◆穏やかに摂政を

 渡部昇一・上智大名誉教授 皇室典範にあるように退位ではなく「摂政」で対応すべきだ。摂政を穏やかに置けばよい。

 陛下が「摂政は好ましくない」と(の趣旨を)述べられたのは、最後まで国民の目に見えるところで象徴天皇として仕事をしたいという、ありがたい心だろう。だが宮中で国と国民のために祈ってくだされば十分だ。天皇の仕事は祈ることだ。

 説得するのは安倍晋三首相がいい。陛下に「お休みください。元号も変わらないで、皇位継承権のある皇太子さまが摂政になれば何の心配もない」と話せばいい。スムーズな皇位継承がなされれば、日本の国威の宣揚にもなる。

◆終身在位は残酷

 岩井克己氏 昭和天皇の崩御を取材し終身在位は残酷な制度だと感じた。天皇陛下のお気持ちを読み、高齢による限界に直面した時は生前に譲位すべきだとの問題提起と受け止めた。科学者でもある人間天皇らしい理にかなった考えだ。譲位は容認すべきだ。上皇や院政の弊害や恣意(しい)的な退位があり得るという心配は考えにくい。摂政は不可。機能を失った天皇と併存し、中途半端だ。

 公務削減は困難。公的行為は天皇の意思に基づき、一律削減は難しい。譲位を認める場合、特別法ではなく皇室典範改正の「王道」を行くべきだ。本人の意思、皇室会議での承認の条件を付ければ、難事とは思えない。

◆現行制度で対応

 笠原英彦・慶応大教授 退位は認められず、皇室典範の改正や特別法、いずれの方法も採るべきではない。現行制度での対応を考えるべきだ。前天皇と現天皇の共存は、統合力の低下を招き「国民統合の象徴」の形骸化につながる。

 摂政設置要件の拡大解釈は一つの方策だ。(摂政の長期化による二重権威の問題について)長期にわたる場合は方策を考えなければならない。

 国事行為は原則現状通りに、公的行為は各天皇が時代にふさわしいと考える行為とすべきだ。

 それでも代替わりした方がいいと対応するなら否定はしない。結論が出たら、女性宮家なども含め議論してほしい。

◆何よりも安定を

 桜井よしこ氏 譲位については賛成致しかねる。皇室には、何よりも安定が必要だ。歴史を振り返れば、譲位はたびたび政治利用されてきた。

 陛下はご自身なりの象徴天皇の在り方を模索なさる中で「常に国民と共にありたい」と願われた。理想的な天皇としての在り方がご高齢で難しくなり、譲位なさると仮定して、同様の天皇像を次の世代に期待することは果たして妥当だろうか。

 全身全霊で祭祀(さいし)や公務に打ち込む、ご高齢の陛下への配慮は当然だが、国家の在り方の問題は別だ。譲位ではなく摂政を置くべきだ。皇室典範に高齢を(要件として)加えれば可能だ。

◆特別法が適当だ

 石原信雄・元官房副長官 天皇が高齢になった場合は退位を認めるべきだ。皇室典範の特別法による法整備が適当だ。皇室典範改正の際は「精神もしくは身体の重患または重大な事故」で公務が困難になった場合も退位を認め、年齢など要件を具体的に定める。

 皇室会議が要件に該当するか否かを認定し、天皇の意志を確認して退位の時期を内閣に通告。内閣が措置を講じる。退位した天皇は原則、国事行為や公的行為をせず、権威は全て新天皇に譲る。

 高齢の天皇の負担軽減策は、短期では国事行為を委任、長期では摂政設置。被災地のお見舞いや各種大会出席など公的行為の縮小も考えられる。

◆臨時代行が最適

 今谷明・帝京大特任教授 天皇はその存在自体が貴重であり、国事行為は必ずしも天皇自身でなされる必要はない。皇族に代行をお願いしても差し支えない。ご高齢の現状に鑑みて(国事行為の)臨時代行こそ最も適した対応であり、摂政設置には及ばない。

 法的措置を要することについては、与野党一致するまで見送る必要がある。天皇より上皇の方が権威を持つ権威の分裂という事態があり得る。退位にはよほど慎重でなければならない。天皇は時間、空間の抽象的支配者であり、それで千年以上来ていた。天皇はいるだけで尊い。二人の立派な皇子がいるのだから全部お任せになっても陛下の怠慢であるとは思わない。

<渡部昇一氏> 1930年、山形県生まれ。上智大大学院西洋文化研究科修士課程修了。2001年から上智大名誉教授。05年の有識者会議で女性・女系天皇の是非が検討された際には異論を唱えた。著書に「日本史から見た日本人」など。

<岩井克己氏> 47年生まれ。慶応大卒。ジャーナリスト。71年に朝日新聞社入社、長年皇室取材を担当。現在は同社皇室担当特別嘱託。天皇家の長女黒田清子さんの婚約内定スクープで05年度新聞協会賞を受賞。著書に「天皇家の宿題」、「皇室一五〇年史」(共著)など。

<笠原英彦氏> 56年、東京生まれ。慶応大教授。日本政治史。著書に「歴代天皇総覧」「象徴天皇制と皇位継承」など。12年の女性宮家に関する有識者ヒアリングでは「宮家創設と皇位継承問題は切り離せない」として女性宮家に慎重な姿勢を示した。

<桜井よしこ氏> ベトナム生まれ。米ハワイ大卒。米紙東京支局員、ニュースキャスターなどを経てフリージャーナリスト。「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の共同代表。女性宮家に関する有識者ヒアリングでは「女系天皇につながる」として反対を表明した。

<石原信雄氏> 26年、群馬県生まれ。84年に自治省(現総務省)の事務次官。87年から95年まで内閣官房副長官として、昭和最後の竹下登内閣から村山富市内閣まで7人の首相に仕え、現在の天皇陛下の即位にも関わった。現在、地方自治研究機構会長。

<今谷明氏> 42年、京都市生まれ。京都大卒。日本中世史。帝京大特任教授。都留文科大学長などを歴任。著書に「武家と天皇」「室町の王権」など。女性宮家に関するヒアリングでは賛成を表明し、国事行為以外の公務は皇族が分担して負担軽減すべきだと指摘していた。

 

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