東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 政治 > 紙面から > 7月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【政治】

「共謀罪」法施行 元裁判官「冤罪の恐れが払拭できない」

「共謀罪法によって、捜査当局の市民監視が強まるのではないか」と憂慮する門野博弁護士=東京都新宿区で

写真

 犯罪の合意を処罰する「共謀罪」の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法が11日、施行され、今後は捜査機関の運用が課題となる。供述中心の立証となるため、東京高裁裁判長を務めた門野博(かどのひろし)弁護士(72)は「冤罪(えんざい)の恐れが払拭(ふっしょく)できない」と懸念する。 (山田祐一郎)

 四十年間裁判官として務め、主に刑事事件を担当した。思い出すのは、茨城県内の強盗殺人事件で男性二人が立件された「布川事件」。二〇〇八年、東京高裁裁判長として、二人の無罪につながる再審開始決定を支持した。

 自白が重要な証拠だったが、警察が自白を強要していたことが判明。犯罪を計画段階で捜査する「共謀罪」法も、物証はメールやメモなどに限られると想定され、供述が重要視される。

 「布川事件は、現在なら取り調べの可視化によって防ぐことができる。しかし共謀罪は自首によって刑が減免されるため、罪を免れようと犯罪を押しつける構図が問題になり、供述の任意性、信用性の見極めが難しくなる」と、捜査機関の運用に危惧を募らせる。

 逮捕令状などを審査する裁判官にはチェック役が期待されるが「捜査機関の資料は限られている。言いなりになっているつもりはなくても疑問を解消する方法がなく、信用して令状を出してしまう」と自身の経験を振り返り、「裁判官は経験したことがないような難しさを味わうことになる」と指摘する。

 特に「共謀罪」法の施行で、刑法の原則が大きく変わると感じる。これまでは、既に行われた「既遂」の犯罪の処罰が基本だったが「計画段階が問題となり、心の中の問題を処罰することになる。どう立証するか、多くの問題をはらんでいる」からだ。

 岐阜県で風力発電施設建設に反対する住民の情報を収集したり、大分県で選挙違反情報収集の名目で監視カメラを無断で設置したりと、警察による市民監視は既に問題化。共謀罪は対象を組織的犯罪集団の構成員に限定しておらず、一般人も対象になり得る。テロ対策に組織犯罪対策…。「さまざまな名目で、警察が何か調べてみようと思えばこの法律が後押しになる。市民監視がさらに強まるのではないか」

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報



ピックアップ
Recommended by