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【政治】

GPIF年金運用 軍事上位10社の株保有 本紙調べ

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 公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、軍事部門の売上高が世界で十位以内に入るすべての企業の株式を保有していることが、本紙の調べで分かった。国民が支払う国民年金や厚生年金の保険料の一部が、武器の製造で収益を上げる世界の主要な軍事関連企業を支えていることになる。 (中根政人)

 軍事部門の売上高は、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が上位百社分(中国を除く)を公表している。GPIFが今年三月末現在で保有する国内外の株式を見ると、SIPRIの調査(二〇一五年時点)で上位十社に入った欧米企業の株式をすべて保有していた。上位百社中三十四社の株式を保有し、国内では三菱重工業、三菱電機、川崎重工業の三社が含まれる。

 保有する株式の時価総額(非軍事部門を含む)の合計は十社で約四千六百五十一億円、三十四社では約一兆三千三百七十四億円に上る。上位十社のうち米国企業は七社。一位のロッキード・マーチンはミサイル防衛システムやステルス戦闘機F35を製造。二位のボーイングは垂直離着陸輸送機オスプレイの開発を担った。四位のレイセオンは、米軍がシリア攻撃に使用した巡航ミサイル・トマホークの製造元。

 諸外国では、スウェーデンやノルウェーの年金基金は、非人道兵器の製造や環境破壊、人権侵害で問題が指摘される企業への投資を排除できるルールがある。GPIFは、委託を受けた運用会社が代表的な株式指数を基に、各国の企業の株を機械的に購入する仕組み。GPIF法など関連三法が購入先を恣意的(しいてき)に選ぶことを禁じているためだ。

 GPIFの担当者は「年金財政上、必要な利益の確保に専念するよう法令で定められている」と説明。厚生労働省の担当者は「特定業種への投資を禁止するには法改正が必要だが、法改正すべきだとの議論は起きていない」と指摘する。

 金融機関などの投資活動を調査するNPO法人「環境・持続社会」研究センター理事の田辺有輝さんは「株式保有が判明した軍事関連企業には、核兵器など非人道兵器の製造に関係する企業も含まれる。こうした企業の株式保有を排除できる法的なルールづくりが必要だ」と訴える。

◆紛争で利益 いいのか

 公的年金は、高齢者の生活を支える社会保障制度の中核。積立金を確実に運用して、利益を上げることの重要性は疑いない。だが、それだけでいいのか。

 GPIFによる株式保有が判明した軍事関連企業が本社を置く欧米の国々は、過激派組織「イスラム国」(IS)の掃討作戦に有志国連合として参加するなど紛争に直接関わっている。

 各企業は紛争が激化するほど武器や装備品の売り上げを伸ばし、株価を上げる。株価が上がれば、GPIFの運用益も増える。

 増え続ける高齢者を将来養うための年金積立金が、国民の知らないうちに「軍事支援」に転用されている構図は、倫理上許されるとは思えない。

 現行法では、政治的な介入や担当者の恣意的な運用を防ぐため、業種を問わず企業株を自動的に購入する以外に選択肢はなく、こうした投資は排除できない。

 日本国憲法は前文で「自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」と宣言している。年金財源確保のためなら、他国で紛争を助長しても仕方ないということにはならない。国会でのルール見直しの議論が急務だ。 (中根政人)

 

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