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【政治】

<安倍政治の4年10ヶ月>(2)安全保障 非公表で安保法運用拡大

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 「初の米艦防護の任務についたと、ほとんどすべてのマスコミに大きく取り上げられている。一切言わないのはおかしい」

 今年五月八日の衆院予算委員会。民進党の長妻昭氏は、安倍政権が二〇一五年九月に成立させた安全保障関連法でできるようになった「平時の米艦防護」について、政府を追及した。

 この任務は、「日本の防衛に資する活動」をしている米軍の艦船などを自衛隊が守ること。武器使用も認められる。今年五月一〜三日、海上自衛隊の護衛艦がこれを担い、太平洋側の日本近海を進む米補給艦に並走。安保法が実際に運用された初のケースとして大きく報じられたが、政府の公式発表はなかった。

 政府の指針では、武装集団による妨害など「具体的な侵害」や「特異な事象」が起きなければ、米艦防護をした事実さえ公表しない。公表すれば、米艦が防護を必要としている状態だと分かってしまうという理由だ。長妻氏の追及にも、安倍晋三首相は「さし控える」と繰り返した。

 しかし、偶発的な衝突が起きた場合、国民が知らないうちに危険な事態が進むことになりかねない。任務を実施するかどうかは基本的に防衛相が判断。国会が関わる仕組みもない。

 六月には、安保法に基づき「平時の物資提供」も実施。日本海で北朝鮮の弾道ミサイルを警戒中の米イージス艦に、海自の補給艦が複数回、給油した。朝鮮半島有事が起きれば、本格的な米軍の戦闘支援に切り替わるが、これも公表されず、報道で明らかになった。

 南スーダン国連平和維持活動(PKO)をめぐる日報隠蔽(いんぺい)問題も、似た構図。

 政府は昨年十一月、安保法に基づき、離れた場所で襲われた国連職員らを武器を持って助けにいく「駆け付け警護」などの新任務を、陸上自衛隊部隊に付与。首都ジュバでは同七月に大規模衝突が発生していたが、その様子を記した日報を、陸自は当初、廃棄したとして開示しなかった。実はデータを保管していたことが判明。安保法の実績づくりを優先し、治安の悪さを隠して派遣したのではないかと批判された。

 この一年間で静かに運用が拡大してきた安保法。第二次安倍政権が発足して早々の一三年二月、歴代内閣が違憲としてきた集団的自衛権の行使容認に向け有識者懇談会が再開したのがスタートだった。首相は任期の大半を使い、自衛隊の任務拡大を進めてきたと言える。 (新開浩)

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◆進む日米軍事一体化

 安倍晋三首相は二〇一二年の第二次安倍政権発足以降、「安倍一強」を背景に、戦後の外交・安全保障政策を根幹から見直してきた。特色は、自衛隊と米軍の軍事的一体化と、情報管理の強化だ。

 手始めは「国家安全保障会議(日本版NSC)」の設置。首相や一部の閣僚だけで外交・安保政策の指針を決められる組織で、北朝鮮のミサイル発射などの事態に素早く対応してきた。半面、議論は非公開。事後の検証すら難しく、「密室」との批判がある。

 ほぼ同じ時期、特定秘密保護法が成立した。米軍との情報共有が狙いだが、秘密を漏らした公務員だけでなく、情報に迫った市民も処罰するため、国民の「知る権利」を侵害する恐れが指摘される。特定秘密の指定数も年々増えている。

 武器や関連技術の海外提供を原則禁止してきた武器輸出三原則も全面的に見直し、輸出容認に転換した。

 自衛隊と米軍の連携も、なし崩しに拡大した。

 歴代内閣が憲法解釈で禁じてきた、他国を武力で守る集団的自衛権行使について、安倍政権は閣議決定で容認。米国との間では、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を再改定し、朝鮮半島有事などを想定した「周辺事態」という言葉を削除した。地球規模での米軍支援が視野にある。

 これらの法的な裏付けとして、集団的自衛権の行使容認や米軍支援拡大を盛り込んだ安全保障関連法を成立させた。今なお「違憲立法」との批判は強い。

 さらに、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法が成立。安倍政権はテロ防止目的と強調するが、国民生活が日常的に監視されかねないと懸念される。

 これらの政策は、世論の反対を押し切り、与党が法案の採決を強行する形で実現させたものが多い。

 首相は「総仕上げ」として二〇年までの改憲施行を掲げ、自衛隊を憲法に書く改憲を訴える。首相が主導すること自体、公務員の憲法尊重擁護義務を定めた憲法九九条違反という批判がある。 (横山大輔)

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