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【政治】

<安倍政治の4年10ヶ月>(3)原発 矛盾、破綻 見直さず

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 二〇一一年の東京電力福島第一原発事故により、いまだに五万人以上が避難を続け、廃炉のめども立たない。世論調査では国民の多くが原発再稼働に反対しているのに、安倍政権は原発重視を変えていない。国は、どの電源をどのくらい使うかを示す「エネルギー基本計画」を来年三月末までに見直すが、今後も必要な電力の二割程度を原発でまかなう方針だ。

 基本計画は三年ごとに見直す。第二次安倍政権発足後の一四年に策定された現行の計画は、原発を「重要なベースロード(基幹)電源」と位置付けた。翌一五年には、三〇年度に必要な電力の20〜22%を原発でまかなう青写真を描いている。実現するには原発が三十基ほど稼働しなければならず、古い原発の稼働期間を特別に延長するなど、無理を重ねることになる。

 現行計画で特に疑問視されているのが、原発で使い終わった使用済み核燃料を、次の核燃料の原料に作りかえて再利用する構想だ。中心的な役割を担うはずの高速炉は、「もんじゅ」(福井県)がほとんど稼働しないまま廃炉と決まった。政府は失敗を認めず、新たな研究施設の建設を検討しており、国民負担の総額は見通せない状況だ。

 原子力政策で数々の矛盾や破綻が明らかになる中、経済産業省は八月、エネルギー基本計画の見直しに着手した。世耕弘成経産相は「骨格を変える状況ではない」と語り、現行の枠組みを維持する構えだ。

 一方でエネルギーをめぐる世界の潮流は、大きく変わりつつある。日本を含む百七十五カ国・地域は一六年、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」に署名した。今世紀後半に、温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにするという野心的な目標を掲げる。

 多くの国は風力や太陽光などの再生可能エネルギーの推進に注力。発電コストが「高い」と言われていた再生エネだが、火力や原子力と対等に競争できるようになりつつあるためだ。

 逆に原発は、福島の事故によって安全対策の強化が求められるようになり、建設費が高騰。日本が原発を輸出する予定だったベトナムは計画の白紙撤回を決め、ドイツや台湾、韓国は脱原発を打ち出した。日本のエネルギー政策は世界から取り残されつつある。 (伊藤弘喜)

◆「安い」は空論でも再稼働

 安倍政権は原発の再稼働を後押ししてきた。二〇一二年の第二次政権発足以降、全国の原発四十三基のうち関西電力高浜原発3、4号機(福井県)など、計五基を稼働させた。原発にかかる費用が膨らみ続けるなど、数々の矛盾や破綻が明らかになる中、強引な政策決定も目立つ。

 「原子力規制委のもとで安全が確認された原発は再稼働する」

 安倍晋三首相は就任直後の一三年二月、施政方針演説でこう宣言した。経済産業省は原発が立地する自治体の説得に当たり、一五年八月から九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)、高浜3、4号機、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)が稼働した。

 安倍政権は、原発を重視する理由を「安定した電力のため」などと説明。しかし、原発が一基も稼働していなかった一三年九月から一五年八月までの約二年間、電力が不足する事態は起きなかった。原発停止をきっかけに節電が進み、太陽光など再生可能エネルギーによる発電が普及したためだ。

 「原発は安い」という主張も、原発事故の可能性は低いとした上での、机上の空論だった。現実に福島第一原発事故が発生し、昨年末には廃炉などに必要な費用見積もりが二一・五兆円へと倍増。政府は反論を押し切り、原発を持たない新電力の契約者も含めた、国民の実質的な負担増を決めた。

 原発で使い終えた核燃料の処理も行き詰まった。政府は核燃料の原料に作りかえて再利用する計画だが、建設中の加工工場(青森県)は一九九七年の完成予定から二十三回も延期し、いまだに完成していない。効率よく再利用できるとされる新しい原子炉「高速炉」も、研究のための「もんじゅ」(福井県)がほとんど稼働せず、昨年末に廃炉が決定。仮に再利用できるようになっても、その過程で出てくる「核のごみ(高レベル放射性廃棄物)」の処分場がない。

 普通の工場であれば産業廃棄物の処分場が決まっていなければ稼働できないが、政府は原発を特別扱いしてきた。行き場のない使用済み燃料や核のごみをため続ける原子力政策を、小泉純一郎元首相は「トイレなきマンション」と批判している。 (吉田通夫)

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