東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 政治 > 紙面から > 12月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【政治】

「核エネルギー制御不能」 外交文書 チェルノブイリ事故で旧ソ連外相

シェワルナゼ氏(ANSA・サン=共同)

写真

 外務省は二十日、外交文書二十五冊を一般公開した。一九八六年四月にソ連(現ウクライナ)で起きたチェルノブイリ原発事故を巡り、翌五月の日ソ外相会談でシェワルナゼ外相が「平和な状況の下においても、核エネルギーは制御し得なくなった」と発言していたことが明らかになった。事故直後に東京で開催された先進国首脳会議(サミット)に向け、日本政府が国内の原発政策に影響するのを避けようと、推進の姿勢を鮮明にすべく動いていたことを示す記録もあった。 (大杉はるか)

 チェルノブイリに関する記録は、外務省原子力課(現国際原子力協力室)が集約した約千五百ページ分。

 四月二十六日の事故発生から約一カ月後の五月三十日、ソ連で行われた日ソ外相会談で、シェワルナゼ氏は安倍晋太郎外相に「チェルノブイリは全人類にとっての強い警告であると思う。事故は悲劇だった。人も死んだし、被ばくして病気になった人も出た。ただし破局は防止することができ、今のところ状況は安定している」と説明。こうしたやりとりが記された公文書が開示されたのは初めて。

 日本政府が発生直後から、事故炉と国内原発の炉型の「違い」や国民への影響がないことを指摘している記録も複数あった。四月二十九日の科学技術庁の文書には「わが国に設置されている原子炉とは異なるものである」「放射能の影響はないと考えられる」と明記されている。

 五月四〜六日の東京サミットに向けた一日付の日本政府の「『ソ連原発事故』対処方針案」では、参加国が取るべき措置として「原発推進の必要性を再確認する」ことを挙げている。中曽根康弘首相用に作成されたサミット発言要領でも「事故の教訓を活(い)かし、今後とも安全確保に努めつつ原子力発電その他の原子力開発利用を推進することが肝要」と記されている。

 日本が議長国を務めたサミットで出された声明は「原子力は将来ともますます広範に利用されるエネルギー源である」「われわれのいずれの国も、厳格な基準を満たしている」と強調。一方で、原案にあったチェルノブイリ事故に対する「懸念」の表現は消え、ソ連に迅速な情報提供を求めたのにとどまった。

写真

◆自然エネルギー財団・大林事業局長 政府は本質見ず

写真

<脱原発を目指す団体「原子力資料情報室」の元スタッフで、自然エネルギー財団の大林ミカ事業局長=写真=の話> チェルノブイリ事故後、当時の政府は「国民に影響はない」との説明で片付けようとしたが、食品や母乳の汚染が明らかになり、脱原発運動が盛り上がった。政府は説明責任を果たさず、検査態勢もなかった。

 チェルノブイリと日本の炉型は異なり、当時の政府が言うように「同じ事故」は起こらない。だが本質を見ないといけない。東京電力福島第一原発でも同じような事故が起きた。原因は全電源喪失。事故はさまざまな要因で起こり得る。

 欧州では一九七〇年代末から、反原発運動が起き、九〇年代以降は原発をやめる国が続々と出た。

 それでも、冷戦構造にしがみつく国は原発を推進した。日本政府は電力会社をつぶさないようにし、二〇〇〇年前後に起こった再生可能エネルギー普及運動への反発もあり、原発にブレーキを利かせず、アクセルをふかせてきた。

 福島原発事故から七年近く経過する今、事故前と同じように原発は他と比べコストが一番かからないという宣伝もみられる。政治や教育の場で、もっと科学的な議論が必要だ。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報